中国全人代: 米国との対決よりも経済の安定を優先すべき
高成長は終わった
中国では、政府が設定した様々な目標を、国が一丸となって追求します。こうした国は、独裁化しやすいといった欠点があります。それでも中国の場合、政府主導の体制で経済の発展を成しとげてきました。
ただ、建設投資などに牽引された中国経済の高成長段階は、すでに終わったと言えます(図表1)。それ自体は、国の豊かさ向上(インフラの充実など)に伴う自然な動きです。しかし現在、中国は多くの問題に直面しています。地方政府の財政赤字、若年層の高失業率、米国との摩擦、高齢化・人口減などです。
成長目標は控えめ
それだけに、3月5日からの全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は、世界中で大いに注目されました。実際、今回設定された経済目標や承認された人事は、中国の行方に関し重要な視点を与えています。
金融市場参加者が最も注目するのは、経済成長率の目標です。これについては首相による演説で、今年は「5%前後」と表明されました。かなり控えめな目標、と言えるでしょう。コロナウイルス対策の緩和に伴う景気回復の動きなどを踏まえると、6%程度の目標が設定されても特段の違和感はなかったのです。
成長よりも安定を
あえて控えめな目標としたのは、中国政府の従来からの姿勢が背後にあります。つまり、経済成長率の高さを追求するのではなく、経済成長の安定性や社会の公平性を向上させることが、政府の基本方針です。
高すぎる目標を設定すると、その達成が危うくなった場合、例えば建設投資を財政で促進することで、成長率を押し上げる必要性が生じます。しかしそれは、地方政府などの過剰投資・負債を膨張させかねません。現在はそうした負債を抑制することが、安定的な経済成長軌道を保つ上で、優先すべき課題です。
自立自強を目指す
また、控えめな目標は、当面の景気に関する政府の慎重姿勢を表します。たしかに、中国では非製造業などの景気回復が顕著ですが(図表2)、海外景気の停滞による輸出低迷が、成長の足を引っ張りそうです。
米国との貿易については、半導体製造装置などに関する米国の対中輸出規制が、中国の成長を圧迫する恐れがあります。そうした問題を、中国政府も強く認識しています。実際、習近平主席はこの全人代の会期中、高度科学技術の「自立自強」(米国などの技術への依存から脱却)を加速させる、と強調しました。
国粋主義への傾斜?
さらに、習主席は6日、「米国主導の封じ込め政策(中国の行動を抑圧しようとする策)」を非難し、これを国営メディアが報じました。習氏が公の場で米国を名指しで非難するのは、極めて珍しいことです。
この全人代では、習主席の3期目入りが正式に決まりました。また、中国のナンバー2である首相には、理知的で温和な李克強氏に代わり、「習派」色の強い李強氏が選ばれました。これらに伴い習氏の権力は一段と強まりそうですが、国粋主義的な独裁を控え、山積する国内問題への対処に注力すべきでしょう。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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