米国のインフレが鈍化: FRBは、もう少し喜んでよい
インフレの鈍化
米連邦準備理事会(FRB)は、まだ利上げを続ける方針です。とはいえ、米国のインフレ(物価高)は、ようやく落ち着きつつあるようです。よって来年前半には、FRBは利上げを停止してよいでしょう。
インフレの鈍化は、最近の指標が示しています。特に12月13日に発表された米消費者物価指数(CPI、11月分)は、前年比7.1%上昇となりました。2017~2019年の平均が2.1%上昇なので、まだ高い上昇率です。それでもインフレのピーク時(今年6月に9.1%上昇)からは、明らかに鈍化しています。
「コア」も鈍化
米国のインフレ率低下に関しては、原油安に伴うガソリン価格などの下落などが、足元、寄与しています。ただ、そうしたエネルギー価格は不安定なので、インフレの基調を見るには、コアCPIも重要です。
コアCPIは、エネルギーと食品を除く消費者物価指数です。そしてこの指数も、インフレの鈍化を示しているのです。実際、11月分のコアCPIは前年比6.0%上昇と、8~10月の平均(6.4%上昇)を下回りました。また、足元のトレンドを見る上で重要な前月比上昇率は、0.2%にとどまりました(図表1)。
鈍化の要因とは?
インフレの鈍化は、コロナウイルスにより激変した世界経済が正常化に向かっているため、と言えます。特に供給網の混乱が和らぎ、物品の不足や輸送コスト高による様々な価格高が、最近一服しつつあります。
また米国では、感染拡大時に行われた所得補助などの効果が、次第に薄れています。さらに、インフレ(→消費者の実質的な購買力低下)やFRBの利上げ(→住宅や自動車などのローン金利上昇)を受け、低中所得層の節約姿勢が強まっています。これらによる需要抑制も、インフレ圧力を和らげつつあります。
家賃相場の下落
したがって米国のインフレ鈍化は続く、と考えられます。ただ、FRBが目標とする2%のインフレ率に戻るには、向こう1年以上を要する見込みです。よってインフレへの警戒は当面、残り続けるでしょう。
それでも、インフレ率が低下すると予想される理由として、極めて重要な点が挙げられます。現在、家賃相場の上昇が鈍っている、という点です(図表2)。これは賃貸契約の更新に伴い、米政府が発表するCPIに反映され、CPIの伸びを押し下げるはずです。米CPIで、家賃は大きな割合を占めるからです。
利上げの停止へ
ただし、良好な雇用環境を背景に、米国では賃金がまだ顕著に増えています。そのような賃金増と値上げの連鎖などで高インフレが定着することを警戒し、FRBは12月14日、追加利上げを決定しました。
とはいえ、今回は0.5%の利上げとなり、先月までの0.75%から幅が縮小しました。引き続きインフレが鈍化すれば、利上げ継続の根拠が乏しくなります。物価安定を使命とするFRBがインフレへの警戒を怠れないのは、よく理解できます。ただFRBも、インフレ鈍化の動きを、もう少し喜んでよいでしょう。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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