民主党の大健闘

世界中のリベラル派は、胸をなで下ろしているはずです。11月8日に投票が行われた米国の中間選挙において、社会面などにおけるリベラリズム（自由主義）を重視する民主党が、大敗を免れたからです。

米連邦議会選挙のうち上院は大接戦となりましたが、民主党が何とか多数党の座を維持しました。下院はまだ多くの票が未集計ですが、保守主義に立つ共和党の獲得議席が、民主党を若干上回る見込みです。上院は共和党がやや優勢、下院は同党が圧倒、という予想が多かったので、「民主党の大健闘」と言えます。

前回の中間選挙

中間選挙の歴史上、ほとんどの場合、大統領の属する政党が苦戦しました。大統領の政党とは別の政党が議会の多数派となることで大統領の暴走が防がれる、といった米国民のバランス感覚が働くようです。

今回の下院選挙では、バイデン大統領の属する民主党が10議席前後を失いそうです（まだ確定せず）。それでも過去を振り返れば（図表1）、「民主党の大健闘」と評価できるでしょう。例えば前回2018年の中間選挙では、トランプ前大統領の属する共和党が、下院で40議席を失うという大敗を喫したのです。

民主党への逆風

「民主党が大健闘」と言えるのは、直前予想や歴史のほかにも理由があります。米国では現在、食品などの物価高が国民を怒らせています。この点で政権党である民主党が、明らかに不利な状況だったのです。

物価高（インフレ）は世界的現象であり、バイデン政権の政策が最大の原因ではありません（大規模な所得補助策などがインフレを助長した面は否めませんが）。それでも、国民の不満が大統領に向けられるのは、やむを得ないことです。にもかかわらず今回の選挙で民主党が大敗を免れたのは、意外だと言えます。

共和党の大誤算

共和党から見て苦戦を強いられた理由としては、様々なことが挙げられます。特に重要なのは、米国の根本的な価値観も問題になった、ということです。これは、むしろ民主党にとって追い風となりました。

共和党は、トランプ前大統領の強い影響下にあります。しかしトランプ氏は独裁的な人物であり、リベラルな民主主義などを、あまり尊重していないようです。そのような人物を祭り上げる共和党に政治を委ねてよいのか、との意識が無党派層などで広がったことなどから、共和党の獲得票が伸び悩んだ模様です。

次の大統領選挙

実際、この中間選挙では、トランプ氏が推薦した共和党候補者の敗北が目立ちました。2年後の大統領選挙で勝ちホワイトハウスに戻るべく今回の選挙で勢いをつけよう、との同氏の目論見が外れたようです。

今回の選挙結果が徐々に判明する前までは、2024年の大統領選挙における共和党候補者として、トランプ氏が圧倒的に有望と考えられました（図表2）。しかし今回の選挙を受けて、そのような観測はかなり怪しくなってきました。よって、この中間選挙における一番の敗者は、トランプ氏なのかもしれません。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/