ブラジルの経済と政治:レアルは上昇、日本円は下落
レアル高・円安
日本や英国など、いわゆる「先進国」の通貨価値が下がる一方、「新興国」の中では今年、それが上がっている国もあります。特に際立っているのは、経済・人口規模で南米最大の国、ブラジルです(図表1)。
過去を見ると、ブラジルの通貨レアルは、しばしば急落を余儀なくされました。大幅な財政赤字や高インフレなどによる経済不安、縁故主義や賄賂が横行する政治の腐敗などが、金融市場などで嫌気されたのです。今年のレアル高は、ブラジルの経済・政治情勢の好転を表しているように見えるかもしれません。
経済は一旦好転
ブラジルは、農産物(大豆など)や資源(原油など)の輸出において、世界有数の大国です。これらの相場が、今年前半に高騰しました。それによる輸出額増などで、今年は底堅い経済成長が見込まれます。
インフレ率も足元、低下傾向です。ブラジル中央銀行が昨年3月、利上げを開始したことの効果などによるものです。こうした果断な利上げは、中央銀行への信認を高め、通貨高に寄与しています。この点は、頑なに利上げを拒む中央銀行の政策などが自国通貨の価値を下げている国、つまり日本とは対照的です。
格差と政治腐敗
ただし、ブラジルの社会情勢は、明るいとは言えません。大規模農家などが潤う一方、空腹に苦しむ人が多数存在するのです。農業大国における空腹まん延という不条理な事態は、分配政策の失敗を表します。
政治や文化では、左派(リベラル)と右派(保守)が対立しています(ただ、ブラジルでは多党が並存し(図表2)、分断の深さは二大政党制の米国ほどではない)。また政治の腐敗も、依然深刻です(ただ、身内を要職につける縁故主義や、政治と産業界などとの不透明な関係については、「先進国」でもあること)。
左右両派の対決
10月2日、大統領選挙の第1回投票が行われました(図表3)。その結果、誰も50%超の得票率に届かなかったため、上位2名(ルラ氏とボルソナロ現大統領)が、10月30日の決選投票で勝敗を決めます。
双方とも、強い個性を持ち、支持層は熱心です。しかし、2003~2011年に大統領だったルラ氏は、自由な市場よりも国家の役割を重視するなど、かなりの左派傾向です。他方、右派のボルソナロ氏は、極端な発言(「コロナウイルスは単なる風邪」等々)、森林破壊助長、息子重用などにより悪名をはせています。
決選投票の行方
現時点では、ルラ氏が勝利し、大統領となる可能性が高そうです。とはいえ第1回投票では、予想されたほどの差はつきませんでした。そのため、ボルソナロ氏が勢いを増し、再選を果たす可能性もあります。
とはいえ、どちらが勝利しても、金融市場は冷静に反応しそうです。議会、裁判所、中央銀行、メディアなどが大統領の独断的な策をけん制する、と考えられるからです。そうしたバランス機能が働く点では、ブラジルは先進国的かもしれません。そのように考えても、レアル高、円安は自然な動きだと言えます。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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