7月4日を迎えて:アメリカは模範たり得るか?

2022/07/04 <>

支持率の低下

アメリカ(米国)は、どこへ向かうのでしょうか。経済は悪化しつつあり、近々リセッション(景気後退)入りする可能性も、否定できなくなっています。同時に、政治、社会、文化をめぐる問題も深刻です。

政治面では、バイデン大統領の支持率が、前大統領のときよりも下がっています(図表1)。昨年1月に就任した同大統領は、称賛すべき実績もあげています。コロナウイルスのワクチン接種推進、欧州や日本など同盟国との関係改善などです。それでも支持率が低迷しているのは、深刻な党派分断などのためです。

民主制の危機

民主党支持者と共和党支持者との分断は、ほとんどあらゆる場面で深まっています。最も明瞭なのは、トランプ氏が2020年の大統領選挙で敗れたことに対する、両党支持者の受け止め方の大きな違いです。

あの大統領選挙は不正であり、バイデン大統領は合法的に勝利したのではない、と見る共和党支持者が、いまだに多いのです(図表2)。現大統領の正統性を認めない国民が少なくないということ自体が、深刻な問題です。選挙に対するそのような不信感は、米国流の民主制への信頼を、根本から動揺させかねません。

銃規制と中絶

社会や文化の面でも、米国内には深い亀裂が走っています。現在、米国で物議を醸しているのは、銃規制や中絶の是非です。それらがなぜそれほどの騒ぎになるのか、日本人には理解しがたいところでしょう。

銃規制については、頻発する乱射事件を見れば、取締りを即時強化すべきと言いたくなります。しかし、自由を求める移民が建国した米国では、銃による護身は譲れない個人の権利と信じる人も多いのです。中絶問題では、生命や宗教をめぐる思想の対立が根底にあり、無信仰者の多い日本から見ると理解困難です。

不公平の存続

このように米国では、修復困難な問題が山ほどあります。よって日本は、米国をそのまま模範としてはなりません。米国経済については、日本より強いとはいえ、公平な経済が実現しているとは言えません。

不公平の是正を掲げて発足したのが、バイデン政権でした。しかし既得権益層に阻まれ、経済・社会改革は、十分に進んでいません。そのような事情もあり、民主党支持層や無党派層の中でも、バイデン氏に失望する人が増えています。支持率低下の原因は、高インフレといった足元の問題だけではないのです。

米国の価値観

ドナルド・トランプ氏のような人が再び大統領になったとしても、社会の安定が訪れるとは全く期待できません。米共和党支持者であっても、そのような安定や調和を予想する人は、ほとんどいないでしょう。

トランプ氏やその熱烈なファンは、人権、多民族の共生、環境保護などを軽視します。たしかにそれらは、偽善へ堕しかねません。しかし米国が世界から尊敬を得るには、そうした価値を掲げ続けるしかありません。独立記念日である7月4日を迎え、米国とはどういう国か、日本の人々もよく考えるべきです。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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