眠られぬ夜:慌てる金融市場、批判される日銀

2022/06/20 <>

市場の変動

市場参加者は、よく眠れていないのではないでしょうか。米国株などが下落し(図表1)、様々な悪影響が出てきているからです(個人的な資産運用に対しても)。不安定な相場は、残念ながらまだ続きそうです。

このような相場になったことには、もっともな理由があります。いま我々が経験しているのは、新型コロナウイルスの発生とそれによる経済・社会の構造変化、さらにロシア・ウクライナ戦争という、後世まで語り継がれる出来事なのです。歴史の激動期にある以上、金融市場だけ安泰となるはずがありません。

悪材料山積

具体的な悪材料としては、世界的な高インフレ、それに伴う米欧の金融引締め、リセッション(景気後退)懸念などが挙げられます。そうした懸念が残り続ける限り、市場の安定は訪れないと覚悟すべきです。

今月、金融市場のムードを一気に悪化させたのは、10日に発表された米消費者物価指数です。米国のインフレ率は5月に前年比8.6%上昇と、4月の同8.3%上昇から加速したのです。市場ではそれまで、インフレのピークは過ぎたとの見方が広がっていただけに、5月のインフレ加速は大きな失望を呼びました。

利回り上昇

市場参加者の狼狽(ろうばい:慌てふためくこと)は、米欧の債券市場に表れています。米国やユーロ圏の国債利回りが、年初から大きく上昇しているのです(図表2)。これほどの急上昇は、極めて異例です。

国債の利回りは、経済成長率の現況および見通し、インフレ率、財政リスク、政策金利などによって押し上げられます。米欧などの国債利回りが上昇しているのは、インフレの高進や、インフレを抑止すべく利上げが加速するという見通しなどが背景です。実際、米国などでは当面、大幅な利上げが予想されます。

弱気相場に

米国債の利回り急上昇は、米国株急落の大きな要因です。国債の利回り上昇に伴い、各種ローン金利が上昇し、企業や家計の資金調達コストが増えるためです。また、債券に比べた株式の魅力が低下します。

米S&P500に関しては、今月13日、ついに「弱気相場」に入りました。直近最高値を付けた今年1月3日の水準に比べ、「20%以上」の下落率となったのです。このような意味での弱気相場は、1957年から数えて12回ほどしかありません。現在の相場環境の厳しさを示すものとして、軽視できない事実です。

日銀の姿勢

それらが、投資家の眠りを妨げています。ただ、眠れなくなっているのは、日銀や政府の高官も同様かもしれません。アベノミクス以来の超金融緩和による円安が、今年、異常なペースで進んでいるからです。

円安は、食品高などを助長しています。しかし、日銀総裁は今月6日「家計の値上げ許容度も高まっている」と述べ、批判を浴びました(その後、発言撤回)。国民生活に無頓着な姿勢が批判されているのだと、謙虚に認識すべきでしょう。そうした認識の薄い人々が眠れなくなったとしても、あまり同情できません。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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