フランスの大統領選挙:マクロン氏の再選は不確実

2022/04/11 <>

金融市場に必要なもの

金融市場が必要としているのは、先行きに関する確実性と安心感です。しかし不幸なことに、いま新たな不確実性が加わっています。今月のフランス大統領選挙について、結果がわからなくなってきたのです。

10日に行われた第1回投票では、現職のマクロン氏が首位となりました(図表1)。ただ、過半数には全く届かず、同氏は、2位のルペン氏との間で、24日の決選投票により決着をつけることになります。もしもマクロン氏が敗れれば、欧州に激震が走り、市場も混乱するでしょう(おそらくユーロの下落など)。

欧州のリーダーとして

現在ほど欧州の結束が必要なときは、ほかにありません。その事実上のリーダーは、マクロン氏です。ドイツの首相は就任後まだ日が浅く、英国については、すでに欧州連合(EU)から離脱したからです。

ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン大統領と対峙する上で、マクロン氏は、頼りになるリーダーです。同氏は、民主主義や国際主義といった欧州の価値観を、極めて尊重しているためです。一方、ルペン氏は極右(国粋主義)に位置づけられ、侵攻前には、主義が似ているプーチン氏を称賛していました。

ウクライナ紛争の影響

約1か月前までは、マクロン氏の再選はほぼ間違いない、と見込まれました。しかし足元、ルペン氏との支持率の差がかなり縮まっており、ルペン新大統領誕生というシナリオも、無視できなくなっています。

マクロン氏は、ウクライナ紛争の勃発前後、プーチン氏との会談を積極的に行い、欧州のリーダー格であることをフランス国民に印象づけました。しかし結局、侵攻を阻止することはできず、紛争は悲惨さを増しています。よって、紛争への果断な関与は、マクロン氏の決定的な長所にはならないかもしれません。

関心事は特にインフレ

また現在、国民の最大関心事は、物価です。3月には、消費者物価指数が前年比5.1%上昇と、過去最大の伸びを示しました(図表2、指数算出開始は1997年)。とりわけ、ガソリン代などが高騰しています。

ルペン氏は、この状況をうまく利用しています。インフレによる生活苦を、減税などで和らげることを公約としているのです。また、年金受給開始年齢(現行62歳)の据置き、もしくは引下げを主張しています。一方、マクロン氏は、65歳への引上げを掲げています。これらは、ルペン氏に有利に働きそうです。

極右思想はまだ残存か

生活苦の緩和を前面に出す一方、ルペン氏は、移民排斥などの思想を和らげています。また、フランスのEU離脱という主張もひとまず取り下げました。それらの結果、危険な極右との印象が薄まっています。

しかし、極右的な思想は根本的には変わっていない、とみられます。それだけに、ルペン氏が大統領になれば、欧州の結束が危ぶまれます。マクロン氏勝利の可能性が現時点ではまだ高いものの、決選投票までに形勢が変わっても、不思議ではありません。よって金融市場は、不確実性に悩まされ続けるでしょう。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融市場の注目材料を取り上げつつ、表面的な現象の底流にある世界経済の構造変化を多角的にとらえ、これを分かりやすく記述します。
<本資料に関してご留意していただきたい事項>
※本資料は、ご投資家の皆さまに投資判断の参考となる情報の提供を目的として、しんきんアセットマネジメント投信株式会社が作成した資料であり、投資勧誘を目的として作成したもの、または、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
※本資料の内容に基づいて取られた行動の結果については、当社は責任を負いません。
※本資料は、信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。また、いかなるデータも過去のものであり、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。
※本資料の内容は、当社の見解を示しているに過ぎず、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。記載内容は作成時点のものですので、予告なく変更する場合があります。
※本資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。当社の承認無く複製または第三者への開示を行うことを固く禁じます。
※本資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第338号
加入協会/一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会