どうなる?ウクライナ情勢:世界経済と金融市場への影響は?

2022/02/28 <>

ロシア軍の侵攻

戦争は、誰の利益にもなりません(軍需産業などを除く)。2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻も、戦場がさらに広がれば、ウクライナ人などの犠牲を増やすだけでなく、金融市場の混迷を深めます。

ただ、ウクライナは、米欧の軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)の加盟国ではありません。したがって、NATO軍には、ウクライナ軍とともにロシアと戦う義務も意思も、今のところありません。しかし、国際秩序への重大な挑戦であるロシアのウクライナ侵攻を、米欧は見過ごすわけにはいきません。

米欧による制裁

そのため米欧は、対ロシアの経済制裁を強めています。とはいえ今は、金融面の制裁(→制裁対象銀行の国際市場における活動が困難に)などにとどまっており、ロシア経済を破滅させるほどではありません。

ロシア経済の中核はエネルギー産業などですが、それらに対する直接的な制裁には、米欧はまだ慎重です。原油・天然ガスなどの資源、小麦などの農産物において、ロシアは世界有数の生産国です。対ロシアの経済制裁によってそうした商品の供給が急減し、商品高が加速する事態を、米欧は恐れているのです。

米欧の経済事情

この意味で、ウクライナ紛争は最悪のタイミングで起こった、と言えます。紛争の前から、金融市場で警戒されていたのは、米欧などのインフレ(物価上昇)です。商品高で、それが一段と加速しかねません。

ロシアのプーチン大統領は、米欧のそのような経済事情をよく把握している模様です。そうした事情のため米欧はロシアの要求に結局譲歩するだろう、といった認識も、プーチン氏の強硬姿勢の背後にあるのでしょう。ロシアの要求とは、ロシア周辺国でのNATOの軍事展開を大幅に縮小させること、などです。

金融市場の反応

以上のことから、ロシアvs米欧という大国間の戦争は、おそらく避けられそうです。ロシアに向けた経済制裁は慎重であることも踏まえれば、今般の紛争による世界経済全体への影響は、まだ限定的でしょう。

主要国では、対ロシアの貿易は大きくありません(図表1)。このため、紛争でロシア経済が混乱したとしても、世界経済への打撃は当面、限られそうなのです。そのような見方から、ロシア株など以外は、金融市場の変動は、案外抑制されています(大戦回避への期待などで米国株は足元、小幅に上昇。図表2)。

ロシアの使命は

ただし、これからの相場展開はプーチン氏の動きにかかっており、それを楽観することはできません。同氏をウクライナ侵攻に駆り立てているのは、政治・経済に関する合理的な計算だけではないからです。

長年の経験と考察で、米国を退け大ロシアを再興するのが自らの使命、と同氏は確信したようなのです。よって、ウクライナの首都キエフを今後制圧したとしても、それだけでは満足しないかもしれません。しかし、同氏の本当の使命とは、野望を慎み、さらなる侵攻を諦め、世界の破滅を阻止することでしょう。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融市場の注目材料を取り上げつつ、表面的な現象の底流にある世界経済の構造変化を多角的にとらえ、これを分かりやすく記述します。
<本資料に関してご留意していただきたい事項>
※本資料は、ご投資家の皆さまに投資判断の参考となる情報の提供を目的として、しんきんアセットマネジメント投信株式会社が作成した資料であり、投資勧誘を目的として作成したもの、または、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
※本資料の内容に基づいて取られた行動の結果については、当社は責任を負いません。
※本資料は、信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。また、いかなるデータも過去のものであり、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。
※本資料の内容は、当社の見解を示しているに過ぎず、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。記載内容は作成時点のものですので、予告なく変更する場合があります。
※本資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。当社の承認無く複製または第三者への開示を行うことを固く禁じます。
※本資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第338号
加入協会/一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会