2021年の世界重大ニュース:変異ウイルスに襲われる中で
2021年に起こったことは、2022年の世界を展望する上で、多くのヒントを与えてくれます。そのような見地に立つと、2021年において特に重要な各月の出来事は、筆者の判断によれば、以下のとおりです。
1月 米国でバイデン新政権が発足
トランプ前大統領は、人権やコロナウイルスへの関心が薄いようでした。そのような大統領が1期4年で退いたことは、国民の尊厳と生命を守るのを本務とする米国の民主政治が、まだ生きている証拠です。
2月 ミャンマーでクーデター勃発
しかし、米欧式の民主政治を他の地域や国に根付かせるのは、極めて困難です。民主化の途上にあったミャンマーで軍部が政権を奪ったことは、2022年も新興諸国などで民主制が動揺するのを予期させます。
3月 米国で大型の経済対策が成立
バイデン米政権がまず注力したのは、所得支援やワクチンの普及などによって、生活を支えることです。そうした対策が比較的円滑に成立したことは、国家の役割増強という、世界的な潮流を象徴しています。
4月 ワクチンの国家間格差が拡大
春以降、欧米の先進諸国などでワクチン接種が急速に進みました。一方、それが遅れた中南米、アフリカなどでは、感染拡大が続きました。国家間の健康・経済格差は、不幸なことに2022年も続くでしょう。
5月 パレスチナの情勢が一時緊迫
信仰は、心を強くします。しかしそれは、ともすれば異教徒や無神論者との融和を拒み、また政治的思わくも絡み、紛争の火種となります。そうした不和は、2022年も中東地域などの安定を脅かしそうです。
6月 デルタ型ウイルスの感染拡大
目先の「経済を回す」には、ロックダウン(活動制限)を避けるべきかもしれません。しかし、そのような中途半端な姿勢では、コロナウイルスの感染は止まらず、変異型が次々に生じるのを覚悟すべきです。
7月 感染拡大の中、東京五輪開幕
デルタ型ウイルスが東京を襲う中、五輪が開催されました。再延期または中止を多数の人が望んだにもかかわらずそれが強行されたことは、強固な権益の前では民主主義も無力なのか、との印象を残しました。
8月 アフガニスタンから米軍撤退
20年も続いたアフガニスタン紛争での米軍敗北は、米国衰退を象徴するものとして、語り継がれるでしょう。一国の覇権が揺らぐのは当然とはいえ、それに伴う国際秩序の混乱は、2022年も頻発しそうです。
9月 中国政府が様々な規制を強化
一方、自国の体制に自信を強めているのが、中国です。不動産市場やテクノロジー企業などに対する規制強化も、米国流の野放図な資本主義では所得格差が拡大する、という中国政府の確信に基づいています。
10月 国連の「COP26」が開幕
覇権をめぐる米中摩擦は、2022年も激しくなるでしょう。しかし気候変動問題では、米中の連携が必要です。今年の国連会議「COP26」に際し、米中がそうした連携を宣言したことは、地球への朗報です。
11月 オミクロン型ウイルスが発生
オミクロン型の発生により、コロナウイルスの脅威が再認識されました。2022年も、世界が「コロナ前」の状況へ完全に戻るとは考えられません。各人、企業、政府は、新しい環境に適応せねばなりません。
12月 物価上昇で、利上げが視野に
サプライチェーン(供給網)も正常化には遠く、足元、米国などで物価上昇(インフレ)が加速しています。2022年もインフレ圧力は残るとみられ、米国では政策金利の引上げ(利上げ)が始まりそうです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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