米中同時危機:ナンセンス!米国の債務上限問題

2021/10/11 <>

政策がもたらす危機

米国と中国は、実は似ています。最新の共通点は、いずれも経済危機に陥る可能性がわずかに残っている、という点です。このような状況を招いたのは、国内の政策や政治的事情、という点も、米中共通です。

つまり最近、中国不動産会社の危機と米国財政の危機が、金融市場で警戒されています。中国の不動産会社を窮地に陥れたのは、借入れ規制の強化です。米国の財政懸念は、与党・民主党と野党・共和党の対立(特に野党の議事妨害)が原因です。いずれの問題も、自国の政策や事情により、自らが招いたのです。

米国の深い党派対立

ただし、より理不尽なのは、米国の危機です。中国の規制強化は、不動産市場の長期的安定を意図した、合理的な措置です。それに対し、米国の党派対立は、与野党間の意地の張り合いという面が大きいのです。

党派対立に起因する米国財政の混乱は、見慣れた光景です。ただ今年は、中道寄りのバイデン政権誕生で、それが多少緩和されると期待されました。しかし期待に反し、9月以降、予算措置の遅れによる政府機能停止、そして債務の上限到達による政府のデフォルト(債務不履行)が、一時、現実味を帯びました。

政府債務の上限問題

それでも9月末、与野党の妥協により暫定予算が成立し、政府機能(公共サービスなどの提供)の停止は、ひとまず回避されました。ただし、より重大なのは、米連邦政府の債務をめぐるデフォルト問題です。

米国の財政は赤字なので、国債を発行し、内外の投資家などから資金を借り入れねばなりません。ただ、国債など政府債務の残高は、法律により上限が設定されています。9月、その上限にほぼ達したため(図表1)、議会がそれを引き上げなければ、新たな国債を発行できず、財政資金が尽きてしまうところでした。

デフォルトの場合は

財政資金が尽きる「Xデー」は10月18日頃、とイエレン米財務長官が9月に警告しました。米政府がデフォルトに陥れば、米経済や金融市場に壊滅的打撃を与える、との危機感を、同長官は表明したのです。

実際、デフォルトとなれば、年金などの支給が滞り、国民を苦しめます。また、元利金の支払い懸念で、米国債の利回りが跳ね上がるでしょう。それに伴い、住宅ローンなどの金利も急上昇し、景気が落ち込み、株価が急落するはずです(デフォルトは回避されても、財政懸念が残れば株価の下落要因に。図表2)。

根本的な問題は残る

そんな事態は、誰も望んでいません。そのため10月7日、債務上限の引上げに関し、与野党が合意しました(デフォルトは一旦回避へ)。しかし引上げ幅は小さく、12月初旬、再び上限に達する見込みです。

米国の債務上限引上げは、本来、既定の歳出を可能にするための、形式的な手続きです。それすらも党派対立で難航し、国民や市場を危機寸前に追いやるのは、全くナンセンス(理不尽)です。こうした混乱が米国で頻発するようでは、米中のうち、どちらの政治がより合理的なのか、という疑問が出てきます。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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