ロックダウンで経済回復:ニュージーランドを見よ

2021/08/30 <>

ロックダウンとは何か?

 日本もロックダウンを導入すべき、という意見が増えています。たしかに、ワクチンだけでは、コロナウイルスに打ち勝てません。しかし、ロックダウンとは何なのか、意味が曖昧なまま論じられています。

 疫病対策としてのロックダウンは、広義では、活動制限全般を指します。この意味では、日本もロックダウンを導入済みです(外出の自粛要請、飲食店の営業制限(罰則あり)など)。いずれにしても、定義を確定しなければ、体系的な対策も打てません。この点で参考にすべきは、ニュージーランドの取組みです。

ニュージーランドの場合

 ニュージーランド政府は、優れたデザインのウェブサイトなどで、丁寧に情報を発信しています。それらによると、同国は4段階のアラート体制をとり、最も厳しい「レベル4」をロックダウンと呼びます。

 主な内容は、外出・移動制限、イベント禁止、公共施設や学校の閉鎖、営業の制限(賃金補助あり)または在宅勤務化です。意図的な違反者には、4千NZドル(約30万円)以下の罰金か、6か月以内の禁錮刑が科されます。なお、入国者の隔離義務はレベル1~4全てに含まれ、違反すると罰則が科され得ます。

実際には相当柔軟に運用

 ただし、ニュージーランドのロックダウンでも、多くの例外が設けられています。例えば「必須の外出」は許容され、これには食品や医薬品の購入(それらの店舗は営業可)のほか、近所での運動も含まれます。

 罰則が適用されることも、極めてまれです(ニュージーランド法務省によると昨年、罰金は46件、禁錮は85件)。活動制限の違反者に対し、警察は、教育第一のアプローチ(まずは注意する)を採用しているためです。罰則に至るのは、常習的な違反や警察への反抗など、悪質と判断されるケースに限られます。

法的根拠も特段問題なし

 以上のようなニュージーランドの対策を根拠づけるのは、『公共健康対策法』です。同国でコロナウイルスの陽性が最初に確認されたのは昨年2月ですが、その約2か月後に、早くもこの法が成立しました。

 ニュージーランドでも、自由の制限は妥当か、との議論があるものの、健康危機下でのロックダウンは正当、というのが通説です。同国の憲法にあたる『権利章典』が定める「人権や自由の合理的な制限」に該当する、と理解されているのです(なお日本国憲法上も、「公共の福祉」の観点から、自由の制限は可能)。

Covid-zero戦略を堅持

 ニュージーランドは、今もコロナウイルスの撲滅を目指しています。そのため今月中旬、感染が再拡大する兆しを察知するや否や、昨年4月以来の「レベル4」を発令しました(国民の大多数がそれを支持)。

 今までニュージーランドは、そうした果断な対応で、感染を抑えてきました(図表1)。結果、経済は昨年後半以降、日本より早く回復し(図表2)、中央銀行の利上げも視野に入っています。そのように感染抑止にも経済回復にも有効である以上、ニュージーランド式のロックダウンを、日本もよく研究すべきです。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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