これぞ中国流:大胆な規制強化と中国株の不調
日本株よりも不調な中国株
感染症対策の不手際などのため、日本株は今年、低迷気味です。しかし、それ以上に不調なのが、中国株(本土株と香港株、図表1)です。その大部分は、中国の政府・中央銀行による政策で説明できます。
中国はコロナウイルスの感染拡大を果断に抑え、昨年4-6月期には、早くも景気回復が始まりました。しかし不動産などのバブル懸念が高まったため、人民銀行(中央銀行)は一時、金融引締め姿勢を強めました(資金供給量の抑制など)。それに対する警戒が、特に今年2月頃、中国株の下落をもたらしました。
規制強化で企業活動萎縮?
ただ、人民銀行は金融政策を柔軟に行っており、7月には預金準備率を引き下げました。これは、市中銀行が人民銀行に預けるべき資金を減らし、融資などへ回せる資金が増えるので、金融緩和の動きです。
よって現在、中国株を圧迫しているのは、金融政策とは別の要因です。つまり、企業・産業に対する中国当局の規制強化や取締まりが、立て続けに、かつ驚くべき大胆さで打ち出されているのです。行き過ぎた規制は、企業活動を萎縮させかねません。そのような危惧から、中国株の下落場面が目立っています。
テクノロジー産業への規制
一連の規制強化は、昨年11月に始まりました。金融テクノロジー企業「アント」の上海・香港上場(新規株式公開)を、中国当局が阻止したのです。問題視されたのは、アントの不透明な株主構成などです。
今年4月には、アントの親会社であり電子商取引大手の「アリババ」が、独占禁止法に違反したとして、約3千億円相当という巨額の罰金を科されました。さらに7月には、配車サービス大手「DiDi」が、新規ユーザー登録の停止を命じられました。理由は、個人情報の収集や使用をめぐる法令違反などです。
教育産業に対する規制強化
テクノロジー産業は、中国で最も勢いのある部門です。それだけに、そうした産業への規制強化は、目先の経済成長や株価よりも経済・社会の健全性を重んじる、という、中国政府の強い意志を感じさせます。
しかし、それ以上の驚きを特に海外の投資家に与えたのは、教育に関連する劇的な規制強化です。7月、小中学生向けの学習塾などに関し、非営利化を義務付けるとともに、株式市場での資金調達などを禁じたのです。中国当局による当該方針を受け、教育サービス企業の株価は、急激に下落しています(図表2)。
「安定」最優先の政策姿勢
学習塾規制の目的は、親と子供の負担軽減です。これは、テクノロジー規制の目的(独占防止や情報保護)と同様、おそらく適切です。いずれも、国民の幸福や経済・社会の安定に資する可能性があるのです。
「安定」の最優先こそは、中国流の政策姿勢です。よって、さらなる規制のため株式市場の安定が本格的に脅かされる事態となれば、規制強化の動きは一服するでしょう。それに伴い、株価下落も抑えられるはずです。中国株の動向は、規制や金融政策などの方針によるところが、他国の市場以上に大きいのです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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