さざ波?:台湾や東南アジアの感染増は、笑いごとではない

2021/05/31 <>

最近は優等生も苦戦

世界は一つです。したがって、すべての国がコロナウイルスを制御しない限り、その侵入・感染リスクはあらゆる国に残り続けます。このことを思い知らせているのが、アジアにおける最近の感染再拡大です。

東アジア、および多くの東南アジア諸国では、昨年、欧米などに比べ感染がはるかに抑制されました。特に、台湾、ベトナム、シンガポール、タイなどは、感染抑止における優等生となり、「アジア時代の到来」を世界に印象づけました。ところが最近1か月ほど、それらの国々で感染者や死亡者が増えているのです。

油断と変異ウイルス

原因としては、二つ挙げられます。第一に、やはり油断です。昨年の成功でやや気が緩み、ワクチンの接種が日本以上に遅れているのです(シンガポールを除く)。第二に、変異したコロナウイルスの流入です。

事実、シンガポールではインド型、タイでは英国型が、最近の感染増をもたらした模様です。これは、非常に懸念すべきです。こうした変異型は、東アジアや東南アジアの人に対しても、強い感染力を有している可能性が高いためです(従来型の場合、アジア人は、ある程度の免疫力を大昔に得ていた可能性あり)。

笑いごとじゃない!

感染拡大を受け、それらの国々は、営業・イベント規制など活動制限を再強化しています。目先の経済や利権よりも、生命・健康を優先したのです。こうした対応は、日本を除くアジアの高い民度を表します。

シンガポールなどで犠牲が増えているとはいえ、日本と比べれば(図表1)「さざ波」程度だと、無神経な人は笑うかもしれません。しかし、それらの国々は、感染増を「笑いごと」にせず、日本より厳しい規制を迅速に導入したのです。人命という究極の人権に関し、日本は追い越された、と認めざるを得ません。

ウイルスは海外から

台湾や東南アジアの感染経路をたどると、その多くは、国際空港内、または、入国者の隔離施設が起点になったと確認されています。コロナウイルスは、感染が抑止されていない他国からやってくるのです。

もちろん、台湾やシンガポールなどは、科学的で厳格な水際対策(入国規制や渡航者の検査・隔離)を行っています。これをすり抜けて感染を広げるのが、このウイルスの怖さです。それだけに、水際対策のずさんな日本が、約10万人の入国が見込まれる東京五輪を開催するのは、「安全・安心」とは言えません。

アジアの成長を確信

台湾や東南アジアの場合、果断な活動制限などによって、感染が際限なく広がる事態は回避できそうです。また、依然堅調な輸出(図表2)も踏まえれば、それらの経済は、プラス成長を維持する見通しです。

かつてアジア新興国へ行くと、持続的な成長・発展が可能なのか、確信できませんでした。人命・人権意識の点で、やや疑問が残ったからです。しかし、人命第一のウイルス対応が示すのは、そうした意識の向上です。よって、それらの国々が日本より豊かになれないと考える理由は、もはやほとんどありません。

 

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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