民主主義万歳!?:ゲームストップ、レディット、ロビンフッド

2021/02/08 <>

実に異様な米国株の変動

民主主義では個人が主役です。よって、米国の株式市場で個人投資家の影響力が増しているのは、至って自然なことです。昨年春以降の米国株上昇も、個人の株式投資増(図表1)に後押しされました。

ただ、個人主導の市場は、異様な相場変動を助長しかねません。それを見せつけたのが、今年1月以降の動きです。米ゲーム販売会社「ゲームストップ」などの株価が、凄まじく乱高下したのです(図表2)。それを促したのは、インターネット上で情報交換や証券取引を行う、個人投資家の無定形な集団です。

個人投資家たちが大勝利

これをめぐっては、個人投資家の軍勢と複数の著名なヘッジファンドが、激しい攻防を展開しました。そして勝利したのは、プロ中のプロとされるヘッジファンドではなく、アマチュアの投資家たちでした。

それらのファンドは、ゲームストップ株が下落すれば利益、上昇すれば損失が生じる取引を行っていました。同社の業績低迷を見て、下落を見込んだのです。しかし、そうしたファンドの動きを知った個人投資家たちが同社株を一斉に購入したため、株価が急騰し、ファンド勢に巨額の損失が発生しました。

ヘッジファンド敗れたり

ヘッジファンドが行った取引は、主に空売りです。これは、借りた株式を売却し、のちに同銘柄を買い戻し、借りた先に返却する、というものです。売却価格と買い戻し価格の差が、利益または損失です。

1月下旬、個人投資家の買いでゲームストップ株が急騰したため、空売り主体であったファンド勢は、高い価格での買い戻しを余儀なくされました。損失が際限なく膨らむのを回避すべく、焦って買い戻したのです。そのような買い自体が一段の株価上昇を招く、との循環が生じ、異様な株高が現出しました。

個人投資家の新しい武器

そのように株高へ誘導し利益を得るのは、ショートスクイーズという昔ながらの手法です。今回のケースが衝撃的なのは、様々なツールを得た個人の集団が、プロを打ち負かし得る、と示されたからです。

実際、個人投資家たちは、情報交換サイト「レディット」上で、強欲なヘッジファンドを懲らしめようと、ゲームストップ株を推奨し合いました。また、証券取引を容易にした「ロビンフッド」というアプリも、この一戦で大きな役割を担いました。ロビンフッドが掲げるのは、まさしく投資の民主化です。

民主主義には堕落の危険

しかし、容易に投資を行えることが健全な民主化、とは言い切れません。事実、ゲームストップ株は、高値をつけた後、急落しています。高値時、気軽にこの株を購入した個人は、大損失をこうむりました。

足元、ゲームストップ株と米国株全体の連動性は弱いため、同社株の動きが金融市場を大混乱に陥れる可能性は、高くありません。ただ、インターネット化がもたらす市場の構造変化には、十分留意すべきです。それが民主化に沿うものだとしても、向こう見ずな民主主義の行きつく先は、堕落と混乱です。

 

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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