不可能を可能に:米国に神の祝福あれ!

2021/01/25 <>

混沌から秩序へ

聖書などの創造神話によれば、神は、混沌とした地上に秩序を生み出しました。米国で誕生したバイデン新大統領は、混沌を極める米国と世界に秩序をもたらす、待望の救い主になり得るのでしょうか。

もちろん、バイデン氏は神ではなく、欠点なき超人でもありません。また、直面する課題は、米国の歴史上、例がないほどに多様かつ深刻です。まず、コロナウイルスによる健康・経済危機(図表1、2)を克服せねばなりません。さらに、社会の亀裂を修復し、米国の国際的地位を取り戻さねばなりません。

本来の価値観を

とはいえ、バイデン氏は、希望を託せる人物です。同氏が巨大な聖書に手を置いた1月20日の就任式も、光明に満ちたものでした。演説で強調されたのは、民主、楽観、善意など、米国伝統の諸価値です。

それはまた、トランプ前大統領による4年前の演説とは、実に対照的でした。トランプ氏は、国内外の敵と国内の「大虐殺」を強調したダークな演説で、世界中の人を仰天させたのです。しかし、敵を憎み、「米国第一」ばかりを前面に出す手法では、米国は偉大になり得ません。世界にも調和は訪れません。

経済政策も対照的

それが判明した今、バイデン政権が政策の大枠を考案するのは、さほど難しくありません。前政権が社会の亀裂を深め、米国の地位を動揺させたのを教訓に、それとは対照的な策を講じればよいからです。

発表済みの策を見ても、違いは鮮明です。例えば、トランプ政権の「功績」と言えば、大型減税が挙げられます。しかし、その恩恵は、富裕層や大企業に偏っていました。他方、バイデン政権が優先するのは、低所得層や子供、マイノリティ(人種などの少数派)といった、弱い立場にある人々の救済です。

排他でなく寛容を

また、トランプ氏が一貫して行ったことと言えば、排他的な移民政策、並びに、米国第一主義に傾斜し過ぎた、独善的な通商政策です。これらに関しても、バイデン氏は、大きな方針変更を図る姿勢です。

特に急ぐとみられるのは、移民政策の修正です。バイデン氏は、例えば「ドリーマー(幼少時、親に連れられて米国に不法入国した若者)」に対し、市民権を付与すべき、と前から訴えています。若い移民は、米国の活力の源泉です。よって、そのように寛容な政策は、米国の経済力向上にも資するはずです。

試練克服の暁には

通商政策では、トランプ氏とは違い、バイデン氏は、多国間ルールに基づく合意を重視する意向です。 ただ、貿易や外交はバイデン政権の最優先課題でなく、対中国の高関税などは、当面不変とみられます。

なぜなら、ワクチンの普及などウイルス対策や、困窮した失業者の救済の方が、よほど切迫した問題だからです。そうした試練を乗り越えた暁には、バイデン大統領には、神のごとき威光が宿るでしょう。そうなれば、米国社会の融和や国際秩序の回復といった、より困難な事業も、不可能ではなくなります。

 

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融市場の注目材料を取り上げつつ、表面的な現象の底流にある世界経済の構造変化を多角的にとらえ、これを分かりやすく記述します。
<本資料に関してご留意していただきたい事項>
※本資料は、ご投資家の皆さまに投資判断の参考となる情報の提供を目的として、しんきんアセットマネジメント投信株式会社が作成した資料であり、投資勧誘を目的として作成したもの、または、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
※本資料の内容に基づいて取られた行動の結果については、当社は責任を負いません。
※本資料は、信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。また、いかなるデータも過去のものであり、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。
※本資料の内容は、当社の見解を示しているに過ぎず、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。記載内容は作成時点のものですので、予告なく変更する場合があります。
※本資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。当社の承認無く複製または第三者への開示を行うことを固く禁じます。
※本資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第338号
加入協会/一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会