来週の金融市場見通し(2018年6月25日~2018年6月29日)

■来週の見通し

中国は、米国の500億ドル相当の中国製品への追加関税に対抗し、同規模の輸入品への関税措置を表明、大豆や自動車などについては米国と同じ7月6日に実施するとしています。これに対し米政権は、新たな制裁を検討するなど、報復の応酬が続いています。独ダイムラーは、米国で生産した自動車の中国販売が下振れすると、今年の利益見通しを下方修正しました。貿易摩擦の影響が広がることには注意が必要です。

◆株価 :  貿易摩擦をめぐる思わくが交錯

米中貿易摩擦への懸念を主因に、日本株は足元、軟調な展開となっています。引き続き、そうした懸念が重しとなりそうです。ただ、米国や他国が関税を引き上げた場合、米国内の消費者や産業にも悪影響が及びます。そのためトランプ政権の保護貿易策は、最終的にはトーンダウンする可能性が高いとの見方もあります。貿易摩擦への過度な懸念が和らいだ場合、日経平均株価は2万3千円近くまで上昇する場面もあり得ると考えられます。

◆長期金利 : 低位横ばい

国内債市場は、日銀の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の下、業者間で新発10年国債の取引が成立しない日が直近1か月で4回も発生するなど、動意の乏しい相場が続いています。日銀が適切だとするイールドカーブ(利回り曲線)に収束してしまったかのような状態です。来週は、貿易戦争への警戒などから長期金利の上昇は限定的。ただ、日銀の国債買入れオペの減額観測がくすぶることから、低下余地も限られそうです。

◆為替 : 引き続きレンジ内の動き

ドル円は、米長期金利が堅調な米景気を背景に2.9%程度で高止まりしていることから、基本的には底堅い動きを想定しています。しかし米中貿易戦争は関税報復合戦の様相を呈しており予断を許しません。米国の保護貿易政策の世界経済に対する悪影響が懸念され、リスク回避の円買いが起こりやすい状況が続いています。来週も両者の綱引きとなり、108円から112円のレンジ内の動きに終始し、明確な方向感は見いだせないと考えています。

◆Jリート :  上値を探る

Jリートは、週央までは米中貿易摩擦への警戒などから投資家心理が悪化し、売りが優勢になりましたが、後半はしっかりで東証REIT指数は約5か月ぶりに1,760ポイントを回復しました。週末は株安も、Jリートは上昇と、堅調地合い。長期金利が低位で推移していることや、予想分配利回りが4%強と相対的に高いこと、オフィス市況が好調なことなどが背景とみられます。米中の動向などを確認しながら、上値を探ることになりそうです。

来週の注目点

鉱工業生産指数(5月、速報値) 6月29日(金)午前8時50分発表

鉱工業生産指数は4月に前月比0.5%上昇し、104.6(2010年=100)となりました。1月に落ち込んだ後、3か月連続で上昇したものの、4月の伸びは市場予想(1.2%程度の上昇)を下回る結果となりました。

在庫指数は4月に前月比マイナス0.6%と、3か月ぶりに低下しました。ただ、在庫水準は依然高いことから、生産計画が慎重化しています。特に、これまで生産をけん引した電子部品の不調が目立ちます。このため、5月の鉱工業生産についても小幅な伸びにとどまる見込みです。

米個人消費支出(5月) 6月29日(金)午後9時30分発表

4月の米個人消費支出(PCE)は、前月比0.6%増と市場予想を上回るとともに5か月ぶりの大幅な伸びとなりました。また、個人所得は同0.3%増と市場予想と一致しました。PCE価格指数は前年比2.0%上昇と米連邦準備制度理事会(FRB)の物価目標と一致しました。

景気拡大が継続する中、税制改革を受けて実質可処分所得が着実に伸びており、引き続き個人消費支出は堅調な推移が予想されます。5月の個人消費支出は前月比0.4%程度、個人所得は同0.4%程度の伸びを予想するとともに、PCE価格指数は前年比2.2%程度上昇と、さらに加速することを想定しています。

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