来週の金融市場見通し(2025年6月9日~2025年6月13日)
■来週の見通し
米経済指標の下振れなどから米景気の減速感が強まり、米連邦準備理事会(FRB)が利下げに動きやすくなるとの見方が広がっています。他方、植田日銀総裁は参院財政金融委員会で、「将来の利下げ余地をつくるために、経済・物価の改善が見込めない中で無理に政策金利を引き上げる考えはない」と利上げに慎重な見方を示しました。来週は6日発表の米雇用統計を受けた米金融市場の動向や米関税政策をめぐる動きに加え、米消費者物価指数(CPI)なども確認しながら方向感を探ることになりそうです。
◆株価 :経済指標に注目
今週の日本株は、底堅い動きとなりました。米国で市場予想を下回る指標が相次いだことは重しとなりましたが、米中首脳の電話会談が行われ、米中貿易戦争に緩和の兆しが見えたことが支えとなりました。また、事業法人による自社株買いが増加していることも相場の下支え要因になっているとみられます。
来週は、6日発表の米雇用統計、9日発表の日本の国内総生産(GDP)など日米の経済指標発表が注目されます。経済指標が市場予想を上回る内容になると、株価を押し上げることが予想されます。また、国内の政治動向も相場を動かす可能性があります。月内の東京都議選、来月の参議院選挙を控えて、与野党の駆け引きが過熱する可能性があります。とくに、11日に実施される党首討論で政治が大きく動く可能性があり、警戒が必要です。
◆長期金利 :一進一退
今週の長期金利は上昇して始まったものの、警戒された10年国債入札では投資家の需要が確認できる強い結果となったことを受け、低下する動きになりました。また、30年国債入札は低調な結果だったものの、財務省が超長期債の発行減額に動きやすくなるとの見方が広がったことも、長期金利を押し下げました。
来週は超長期債利回りや米長期金利の動向を確認しながらの、一進一退の動きになりそうです。植田日銀総裁が利上げに慎重な姿勢を示していることや、超長期債の発行減額への期待、またFRBによる利下げが意識されていることなどから、長期金利は上昇しにくくなっています。もっとも、1.5%程度から1.4%半ばまで低下してきており、利益確定売り(価格下落、利回り上昇)に押される場面もありそうです。
◆Jリート :徐々に上値を探る
今週のJリート市場は、上昇しました。東証REIT指数(配当なし)1,750ポイント付近では戻り売りが見られたものの、底堅い動きとなりました。今週末の分配金利回りは5.002%(東証上場REITの予想分配金利回り、QUICK算出)でした。
来週は、日米長期金利や日米、米中間の通商協議の動向をにらみながら、徐々に上値を模索する展開になることを想定しています。長期金利の上昇が落ち着いていることや、米国が対日本の相互関税の引き下げに柔軟な姿勢との報道は安心材料です。日銀が利上げに慎重な姿勢を示していることや、5%程度の予想分配金利回りに着目した一定の買いが引き続きJリートを下支えすることが期待されます。ただし、日米通商協議が難航すれば、投資家心理が悪化する可能性がある点には注意が必要です。
◆為替:上値重い
週初は米中・米欧の関税協議が難航する中、ドル円は142円台半ばまで下落しました。その後、米求人件数の増加など底堅い米労働市場を示唆する指標などを受け、ドル円は一時144円台まで上昇しました。週末にかけ、5月に米非製造業部門の活動が縮小したことを示唆する米経済指標の発表などを背景に、ドル円はやや下落し、143円台で週末を迎えました。
来週のドル円は、今週末に発表される米雇用統計の結果次第で上下に大きく振れる可能性がありますが、基本的にドル円の上値は重そうです。米中間の首脳が電話会談を行ったことで一定の安心感はあるものの、米関税政策の先行き不透明感と米景気後退懸念は根強く、リスク回避の動きがより高まった場合、ドル円は再び大きく下落する可能性があります。
◆米国株 :落ち着いた動きか
今週の米国株は、底堅い動きになりました。米国で市場予想を下回る指標が相次いだことは重しとなりましたが、米中首脳の電話会談が行われ、米中貿易戦争に緩和の兆しが見えたことが支えとなりました。
来週は、目立ったイベントはなく、落ち着いた動きになることが予想されます。ただし、トランプ大統領の動向が相場を大きく動かす可能性はあり、注意が必要です。電話会談を受けて、米中貿易戦争の緩和への期待がやや高まっていますが、再び対立ムードが高まると、株価を圧迫することが予想されます。一方、首脳同士の直接会談の日程が決まるなど、さらに緩和ムードが高まると、株価が上昇する展開も想定されます。また、関税措置の無効を巡って、米司法に新たな動きがあるかも注目されます。
■来週の注目点
法人企業景気予測調査(25/4-6月期) 6月12日(木)発表
1-3月期の法人企業景気予測調査では、大企業・全産業の景況判断指数(BSI、季節調整値)は、4.3%ポイントと好不調の基準となるゼロを上回りました。製造業では、一部メーカーの工場稼働が再開した自動車の景況感が改善したほか、非製造業では、サービス業や情報通信業が改善を牽引しました。
4-6月期のBSIは低下すると見込まれます。好調なインバウンド需要などを受けて非製造業は底堅い動きが予想されますが、米国の関税政策を背景に製造業が大幅に悪化するとみられます。
米消費者物価指数(5月) 6月11日(水)発表
4月の米国の消費者物価指数(CPI)は、総合指数が前年比2.3%上昇と前月から減速しました。変動の大きい食品、エネルギーを除くコア指数は同2.8%上昇と伸びは横ばいとなりました。トランプ政権による関税引き上げのコスト高を価格転嫁する動きは限定的であったほか、サービス品目の価格の伸びが縮小しました。
5月のCPIは、総合指数が前年比2.5%、コア指数が同2.9%程度の上昇が予想されます。関税引き上げによる価格転嫁が進展することで、財品目を中心に価格が上昇することが見込まれます。
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