来週の金融市場見通し(2024年5月27日~2024年5月31日)
■来週の見通し
米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で、インフレ鈍化の過程が長引く可能性があり、物価上昇率が目標の2%に向かって低下する兆しがみられない場合には、引締め的な政策をより長く維持することを議論したことが判明し、米利下げ観測がやや後退しました。他方、米半導体大手エヌビディアの決算は予想を上回りました。来週は東京都区部・消費者物価指数や日銀高官の発言、米国では個人所得・個人消費支出や米連邦準備理事会(FRB)高官の発言などを確認しながら、方向感を探ることになりそうです。
◆株価 : 底堅い動きか
来週は、為替が円安水準で推移していることや国内の企業業績が改善していることを背景に底堅い動きが予想されます。外国人投資家の資金流入が継続していることも追い風です。ただ、日銀が早期に金融政策の正常化を進めるのではないかとの警戒感から国内長期金利が 1%まで上昇しましたが、一段と金利が上昇すると株式市場は嫌気しそうです。また、米経済指標の発表を受けて米金利が上昇すると、株価を下押しする可能性もあり注意が必要です。
◆長期金利 :押し目買いが入ると上昇一服も
日銀が追加利上げや国債買入れの減額など政策の正常化を進めるとの観測がくすぶる中、長期金利は1.005%と 12 年ぶりに 1%を上回りました。米利下げ期待が後退したことも国内金利を押し上げた格好です。ただ、長期金利は黒田前日銀総裁が導入した異次元緩和前の水準に戻っており、押し目買いが入ると金利上昇は一服しそうです。来週は日米のインフレ指標、日銀高官の発言などを確認しながら、居所を探ることになりそうです。
◆為替:底堅い
ドル円は、底堅い地合いが続きそうです。FRB高官から、米インフレが鎮静化するには長期間政策金利を高水準で維持する必要がある、等の発言が相次ぐ中、利下げ開始は早くとも 9 月以降となる可能性が高そうです。日米の実質金利差は引き続き強いドル買い要因になるとみられることから、ドル円は今後も底堅い推移が見込まれます。また、イエレン米財務長官が為替介入に否定的な姿勢を明確にしていることもドル円を下支えしそうです。
◆Jリート :上値の重い展開か
植田日銀総裁による利上げタイミングの前倒しに関する発言や、日銀の国債買い入れオペの減額以降、国内長期金利に上昇圧力がかかりやすい状況が続いています。また、FRB高官の発言や堅調な米経済指標を受け、米国の早期利下げ観測も後退しています。割安感に着目した一定の買いは期待されるものの、国内外の金利上昇はJリート市場にとって重しとなることから、徐々に下値を切り下げる展開も予想されます。
■来週の注目点
東京都区部・消費者物価指数(5 月) 5 月 31 日(金) 8 時 30 分発表
東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は 4 月に前年比 1.6%上昇と、3 月の同 2.4%上昇から伸びが鈍化しました。東京都が開始した高等教育無償化の影響を受け、授業料等が同 14.7%下落したことがコアCPIを押し下げました。
5 月のコアCPIも、前年比 2%程度の上昇率が見込まれます。教養娯楽費の価格上昇などが物価を押し上げそうです。今後も当面、賃金の引上げに伴うサービス価格上昇の動きも踏まえれば、コアCPIの上昇率は 2%程度の水準で推移すると予想されます。
米個人消費支出(4 月) 5 月 31 日(金) 21 時 30 分発表
3月の米個人消費支出(PCE)は、前月比 0.8%増と前月並みとなりました。PCE総合価格指数は前年比2.7%上昇となり、前月から伸びが加速しました。また、食品とエネルギーを除くPCEコア価格指数は同 2.8%の上昇と前月並みとなりました。
米労働市場は依然底堅く、米連邦準備理事会(FRB)による利上げなどが個人消費の重しになるとみられるものの、今後もインフレ率は高止まりしそうです。4 月のPCEは前月比 0.3%増程度、総合価格指数は前年比 2.7%程度、コア指数は同 2.8%程度の伸びが想定されます。
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