来週の金融市場見通し(2022年8月29日~2022年9月2日)
■来週の見通し
注目が集まるジャクソンホール会議でのパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演(26日)で、金融引締めに積極的な姿勢が示された場合には、インフレがピークに達し、引締めペースが鈍化するとの市場の期待が大きく後退し、米金融市場が不安定な動きになる可能性があります。逆に、引締めペースの鈍化を示唆する内容となった場合には安心感が広がることも想定されます。来週は、パウエルFRB議長の発言を受けた米市場の反応に影響を受けそうです。米雇用統計などの経済指標も確認したいところです。
◆株価 :方向感を欠く展開に
日本株は、方向感を欠く展開が予想されます。米国などのインフレをめぐる不透明感や世界景気の減速懸念が、内外の株価を圧迫しそうです。ただ、日本でもインフレ圧力が高まっているものの、物価上昇の基調は強くないとの見方から日銀は現行の金融緩和策を維持するとみられ、それによる超低金利が引き続き日本株を下支えする見込みです。そうした中、内外で発表される多数の経済指標により、世界景気の情勢を確認する必要があります。
◆長期金利 :一段の上昇は限定的
天然ガスの価格上昇を受け、インフレが意識されたことや、FRBの金融引締めが長引くとの見方などから、米長期金利が3%台に乗せる動きになり、国内の長期金利も一時0.230%まで上昇しました。パウエルFRB議長の講演を受け、積極的な米利上げ観測が強まると、国内の長期金利も押し上げられる可能性があります。ただ、一段の上昇では押し目買い(価格上昇、利回り低下)も入り、金利上昇を抑制することも想定されます。
◆為替 :底堅い中、一進一退
ジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の発言を控える中、複数のFRB高官からタカ派的発言が続いています。米国は最大限の雇用状態にあり、インフレ率が高どまりしていることから、今後も金融政策を一段と引き締める見通しです。9月にも大幅利上げの可能性が高く、ドル円の底堅い地合いは継続しそうです。他方、米景気の減速懸念も強く、ドル円の上値も限定的とみられ、当面、一進一退の展開が続きそうです。
◆Jリート :底堅い動きの中、上値を探る
FRBの大幅利上げ継続への警戒から、投資家心理が悪化し、売りが先行しました。ただ、東証REIT指数は2,000ポイントを割り込まず、下げ幅を縮小する動きになりました。政府が入国者数の上限を引き上げる方向で調整していると伝えられていることは下支え材料です。長期金利がやや上昇していますが、日銀が許容する上限は0.25%で、一段の上昇は限定的です。2,000ポイント台前半でもみ合いながら、上値を探る動きが続きそうです。
■来週の注目点
鉱工業生産指数(7月、速報値) 8月31日(水)午前8時50分発表
鉱工業生産指数は6月に前月比9.2%上昇し、96.1(2015年=100)となりました。業種別では、中国における活動制限解除などに伴い、自動車工業、電気・情報通信機械工業などが大きく上昇しました。一方、食料品・たばこ工業、鉄鋼・非鉄金属工業などが低下しました。
7月の鉱工業生産指数は、前月比で小幅な上昇が見込まれます。国内では新型コロナウイルスの感染が急拡大しているものの、「まん延防止等重点措置」などは導入されておらず、生産などへの影響は限定的とみられます。ただ、自動車工業などでの部品不足は解消されていないため、生産は当面、緩やかな伸びにとどまりそうです。
米雇用統計(8月) 9月2日(金)午後9時30分発表
7月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数は前月比52万8,000人増となり、市場予想を大幅に上回りました。また、失業率は3.5%と、前月の3.6%から低下しました。米景気の減速懸念が高まる中でも、米国の労働市場が引き続き堅調であることが示唆されました。
雇用者数は前月に引き続き、娯楽・ホスピタリティ、ヘルスケアなどの分野を中心に広範囲で伸びた模様です。とはいえ、今後は金融政策の引締めの影響や米景気の減速懸念もあり、次第に雇用者数の伸びは鈍化するものとみられます。8月の非農業部門雇用者数は前月比30万人増程度、失業率は3.5%程度を想定しています。
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