来週の金融市場見通し(2021年12月6日~2021年12月10日)
■来週の見通し
新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」に対する既存のワクチンの有効性について、医薬品メーカーの見方が分かれています。既存のワクチンの有効性については年内には判明する見込みですが、それまでは神経質な動きが続く可能性があります。他方、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長がテーパリング(量的金融緩和の縮小)のペースを速めることに言及しました。14~15日に開かれる米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を確認するまでは、米金融政策面からも動きにくい状況が続きそうです。
◆株価 :方向感の乏しい展開か
日本株は、方向感の乏しい展開が予想されます。新型コロナウイルスの変異株に関する情報がより明確になるまで、積極的にリスクをとる動きは限られそうです。また、米国の金融政策をめぐる不透明感も、株価の重しとなる見込みです。とはいえ現時点では、世界景気が大きく悪化する可能性は低く、変異株の発生に対する株式市場のこれまでの反応は、やや行き過ぎとみられます。よって、値ごろ感に着目した買いが日本株を下支えしそうです。
◆長期金利 :狭いレンジでのもみ合いか
パウエルFRB議長がテーパリングの加速に言及したことを受け、金融政策の正常化を速めるとの観測は長期金利の押上げ材料も、オミクロン株への警戒から、長期金利は低下しました。2021年度補正予算案で、利付国債の発行額が据え置かれたことも長期金利の押し下げ材料です。ただ、来年度の国債増発への警戒もくすぶり、一段の低下は限定的とみられます。米金利や新型コロナの動向をにらみながら、もみ合う動きが続きそうです。
◆為替 :下値限定の中、一進一退
ドル円は一進一退の動きが続きそうです。新型コロナ「オミクロン株」の感染が世界的に拡大していることから、米長期金利は1.4%台に低下しています。それを受け、ドル円も113円前半で推移しています。当面、ドル円はオミクロン株の感染状況とそれを受けた米長期金利の動きに振らされそうです。とはいえ、米国の早期利上げ観測は高まっており、同金利の低下余地は限定的とみられることから、ドル円の下値余地も限られそうです。
◆Jリート :方向感は出にくいか
東証REIT指数は、オミクロン株への警戒から一旦大きく値を下げましたが、その後は押し目買いも入り、下げ幅を縮小しました。東証REIT指数が2,000ポイント前半まで下落していることや、長期金利が低位で推移する中、予想分配金利回りが3.5%程度まで上昇していることから、戻りを探る動きも出てきそうです。もっとも、既存ワクチンの有効性やオミクロン株の危険性などが判明するまでは、方向感は出にくいとみられます。
■来週の注目点
景気ウォッチャー調査(11月) 12月8日(水)午後2時発表
景気ウォッチャー調査の現状判断指数(DI)は、10月に前月差13.4ポイント上昇の55.5となりました。9月末に緊急事態宣言が解除されたことに伴い、特に飲食・サービス関連の指数が大幅に上昇しました。
11月の現状判断指数は、小幅な上昇が見込まれます。新型コロナウイルスの感染者減少を背景に、引き続き飲食・サービス関連などの景況感改善が示されそうです。ただ、企業部門については、原材料・エネルギー高などが、特に製造業の景況感を圧迫した模様です。今後は、国内外で感染症への不安が長引くと見込まれるため、景況感の改善は当面停滞する可能性が高いとみられます。
米消費者物価指数(11月) 12月10日(金)午後10時30分発表
10月の米消費者物価指数(CPI)は、総合で前年比6.2%の上昇となり、1990年以来最大の伸びとなりました。また、変動の大きい食料、エネルギーを除くコアCPIは同4.6%上昇となり、やはり1991年以降で最大の伸びとなりました。前月と比較すると、10月は、住居費や自動車などの上昇が影響した模様です。
新型コロナのオミクロン株への懸念は強いものの、米国のサプライチェーンの混乱や人件費等の上昇は続いており、当面、米国のインフレ率は高水準を維持する可能性が高そうです。11月は総合で前年比6.7%程度の上昇、コアは同4.9%程度の上昇を想定しています。
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