実は注意したい「PERによる割安判断」
10月相場もそろそろ終わろうとしている今週の国内株市場ですが、全体的に軟調な値動きが目立っています。日経平均は25日(木)の取引で7月5日の安値(21,462円)を下回る場面を見せていて、月初に年初来高値を更新した時点からは、かなり相場のムードが悪くなっている印象です。また、TOPIXについては連日で年初来安値を更新しています。
先週までは、株価急落の落ち着きどころを探りつつ、次の展開に向けた「踏み台」作りをしているようにも見えたのですが、結局は下値を探る動きになったことで、「好調な企業決算が外部要因による懸念(米中摩擦、中国の景気減速など)を押さえ込んで株価は上昇していく」という強気シナリオはいったん矛を収めている格好です。
その一方で、年末株高に向けての期待感は根強いものがあるようです。国内外企業の決算発表が本格化していますが、今のところ日米ともに良好なものが多くなっていますし、PER(株価収益率)でも日経平均の予想PERは12倍台と、アベノミクス開始以来の低水準です。「割安感がある中、センチメントの悪化で売られ過ぎている」と考えるならば、足元の状況は絶好の押し目買いのタイミングになります。
ちなみに、NYダウの予想PERは大体16倍台半ばです。年初は20倍を超える水準だったのですが、その後は低下していき、おおむね16~17倍台での推移が続いてきました。そして、最近までのNYダウは上昇基調を辿っていました。
PERは、「株価÷EPS(1株あたり利益)」で計算されるため、株価が上昇してもPERが上がらないということは、EPSの増加が見込まれていたことを意味しています。つまり、米国企業の「稼ぐ力」への期待が高かったことを意味しています。
ただし、米国企業の稼ぐ力の多くは、いわゆるトランプ減税効果によるところが大きく、来年以降はその貢献度が剥落します。さらに、米中摩擦や金利動向が業績に悪影響を及ぼす懸念があり、足元の業績自体は良くても、将来の見通しを慎重に見積もる企業も増えてきています。
稼ぐ力の期待値が強ければ、高い値のPERが許容できるのですが、今後EPSの低下が見込まれれば、現在16倍台のPERに割高感が出はじめ、いずれ株価が下落していく、もしくは上値を試しづらくなるシナリオが浮上します。直近までの日本株上昇は、米国株と比較した出遅れ修正の面があるため、キャッチアップの目標である米国株が失速してしまえば日本株も上昇しにくくなります。
PERは企業の稼ぐ力という価値を株価と比較し、株価の割安度を判断する上で極めて有効です。ただ、PERは株価のトレンドと同じで、上昇局面は期待値が高まっている時期、反対に下落局面は期待値が下がっている時期を示しています。「PERがココまで下がって割安感が出たから買い」という判断は決して悪くないものの、状況によっては、PERの底打ちから再び上昇に転じるまでにかなりの時間が掛かってしまう可能性があることには注意が必要です。
果たして、足元の株式市場の軟調な地合いは、期待通りの「一時的な株価調整」なのか、はたまた波乱への「潮目の変化」なのか、市場の見方がまとまるにはもう少し時間がかかりそうです。
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