米金利上昇は株価調整の口実に使われただけなのか?

2018/10/19

 今週の国内株市場ですが、先週の株価急落の慌ただしさから落ち着きを取り戻そうとする印象の値動きになっています。

 

 日経平均は週初の15日(月)こそ下落して始まったものの、翌16日(火)にはすかさず反発し、200日移動平均線を回復しました。そして17日(水)の取引では、「窓」空けの上昇で75日移動平均線水準も回復してきました。週足でも52週移動平均線がサポートとして機能しています。

 

また、先週の株価急落によって、97日を起点にした上昇分をほぼ打ち消す格好となりました。具体的には、2,276円上昇した後に2,125円の下落を演じたわけですが、今週になって相場のムードは「どこまで株価が戻せそうか?」に転化しつつあるように見え、次に試されるのは23,000円台の早期回復になります。

 

少し時間を遡ると、今回の急落前の日経平均は大台の24,000円に乗せ、年初来高値を更新していました。今年に入ってからの日経平均24,000円台乗せは1月以来、今回で2回目になるわけですが、実は前回の時と今回で状況が似ている点がいくつかあります。

 

例えば、(123,000円台を上値抵抗となるもみ合いがしばらく続いていたこと、(2)週足チャートで23,000円台を駆け上がる大きな陽線が出現した後に24,000円台乗せを達成したこと、(3)その後、米国の長期金利上昇をきっかけに株価が下落に転じたこと、などです。

 

そして、前回はこの後、52週移動平均線をサポートにして株価が反発していきましたが、今回も今のところ、同じパターンを描きそうな感じで相場が進んでいます。つまり、株価が高値警戒感を帯び始めたところに、米国の金利上昇がタイミングの良い売りの口実として使われたと考えることができます。となると、足元の金利上昇を過度に警戒する必要はないのかもしれません。

 

ただし、「金利の上昇傾向が好調な米国景気のピークアウトを早めてしまう」というリクツがありますし、米中摩擦をはじめとした米国の通商政策の影響で、いわゆる「コストプッシュ型」の物価上昇が顕在化したり、米FRBが金融政策の出口戦略を進める中で、増発傾向にある米国債の買い手が不足するなどの受給的要因による債券売り(金利上昇)というシナリオも燻っています。

 

したがって、同じ金利上昇でも、その理由が従来の好調な米国経済の拡大だけでなく、別の要因によってもたらされる可能性があるわけです。さらに、米国の長期金利3%という水準自体は過去において必ずしも高水準ではありませんが、世界的に債務残高が膨らんでいる現在では、金利上昇による影響度や敏感度は以前よりも大きくなっている点は留意する必要があり、今後は金利上昇の背景も注目されることになりそうです。

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