近視眼的な「小手先」対応の功罪

2018/06/15

「アフター米雇用統計」となった今週の国内株市場ですが、12日(火)の日経平均が節目の23,000円台に乗せる場面を見せるなど、米朝首脳会談や日・米・欧の金融政策決定会合などのイベントが盛りだくさんの中、これまでのところ全般的に堅調な展開となっています。

 

一方で、日経平均は直近高値である5月21日の高値(23,050円)まであと一歩のところまで迫りながらも抜けきれないパワー不足も見え隠れしています。ここを上抜けできればチャートの形状が「N字型」となり、上値追いの期待が高まりやすくなるのですが、反対に失速してしまうと、今度は「M字型」のダブルトップの形成が意識されやすくなります。ここ最近の株価上昇傾向が、不安の後退と需給的な買い戻しに拠るところが大きいだけに、イベントを睨みつつ、買いが膨らむきっかけが欲しい局面です。

 

そんな中、14日(木)の日経平均は反落でスタートしています。米国株市場が下落した流れを受けた格好ですが、具体的には、想定通りの利上げが決定された米FOMCで、今年の利上げ回数が3回ではなく4回になる見込みが高まったことと、米中の通商摩擦に対して悪化が警戒されたことが背景になります。米中の貿易摩擦についてもう少し踏み込んで見ますと、トランプ政権が早ければ15日(金)にも、中国からの輸入品に対して追加関税を発動する可能性があると報じられ、キャタピラーやP&Gなどの米国の中国関連企業銘柄が売られました。

 

ただし、この報道はサプライズでも何でもなく、米国が対中国製品の関税引き上げ対象リストを15日(金)までに作成することになっているスケジュールは事前に判っていました。今週は米国が中国企業のZTEに課している制裁が解除されることになって、米中摩擦への警戒感が和らぐ場面があっただけに、その反動が出たとも言えますが、目先の材料に市場が近視眼的に動いている表れと考えることができます。

 

そもそも、先日開催されたG7で、財務相会合・首脳会合ともに、米国の通商政策を巡って米国対残りのG6という構図になっていますし、米利上げによる新興国経済への影響なども併せると、不安材料が燻っていることは引き続き認識しておく必要があります。

 

また、米朝首脳会談についても、署名された共同宣言の中身を見ると、これまでと比べて大きな進展は無かったのですが、その割に、完全な非核化のプロセスがはっきりしないまま、トランプ米大統領は北朝鮮の体制維持の保証に言及するなど、損得だけでみれば北朝鮮有利にも見えます。

 

トランプ氏としては、具体的な進展は今後の交渉で詰めれば良いという考え方なのかもしれませんが、彼が得意とするディール(取引)と外交とは異なります。特に、北朝鮮情勢は中国やロシアの存在も絡んでくるため、そう単純に事は進まないと思われます。確かに、今回の首脳会談によって、目先の軍事的衝突などの不安を後退させた面はありますが、小手先の対応感は否めず、今後北朝鮮が約束を反故にした際に、圧力や対応の選択肢を限定的にさせてしまう状況も有り得るかもしれません。

 

目先の材料に振り回されやすい相場地合いは、継続的なトレンドが形成されにくいため、投資戦略としては短期的な逆張りスタンスが有効ではあります。ただ、中長期的な事態の大きな変化に気付くのが遅れがちになりやすいという欠点もあるため、注意が必要です。

 

 

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