「先送りされた不安」は蒸し返されるのか?

2018/05/18

今週の国内株市場ですが、日経平均は前週末の上昇を引き継ぐ格好でスタートし、22,900円台に乗せる場面もありました。日経平均は、下落トレンドを辿った1月23日の天井と3月26日の底までの下落幅からの戻りを試している最中ですが、先週は「半値戻し」をクリアし、今週になって「3分の2戻し」である22,869円もクリアしたことになります。

 

もっとも、全値戻し(24,129円)を達成するには、23,000円と24,000円の両方を超える必要があるため、ここから先のハードルは少し高くなります。手掛かりのひとつである企業業績も、決算発表シーズンが今週で一巡することもあり、しばらくは一服感が出てくるのかもしれません。また、16日(水)の終値が22,717円と引き続き戻り基調を維持していますが、そもそも2017年の大納会終値が22,764円だったことを踏まえると、現在の株価水準はまだ昨年末比でプラスになるかどうかのところに位置していると言えます。

 

日経平均の戻り基調は、下落の要因となっていた不安材料の後退によってもたらされた面があリます。具体的には、米国の金利上昇への警戒や米中の通商をめぐる交渉、地政学的情勢などが挙げられるのですが、国内外の金融市場はここにきて後退したと思われた不安が未だ燻っていることが意識される微妙なムードが漂っています。

 

米国市場では金利動向に敏感な状況になっているほか、米中間のいわゆる「貿易戦争」は回避されたものの、肝心の交渉については具体的な落とし所が定まっておらず、長期化する可能性がありますし、地政学面についても、米朝首脳会談を控える中で、北朝鮮が突如として南北の閣僚級会談の取り止めを発表し、雪解け楽観ムードに水を差す格好となったほか、中東に目を向けても、イラン情勢や米国の駐イスラエル大使館のエルサレム移転による波紋などが、原油価格への影響を含めて注視されます。

 

つまり、燻っている不安の多くは後退ではなく、「最悪の事態を避けるために交渉の余地を残して、いる」だけで、先送りされている状態であると言えます。目先の日経平均は、こうした不安の蒸し返しリスクを警戒しつつ、23,000円台乗せをうかがうことになりそうです。

 

 

 

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