「通商をめぐる米中のやりとり」は要警戒か?
4月に入り、名実ともに新年度相場を迎えた今週の国内株市場ですが、日経平均はこれまでのところ方向感に欠け、どちらかというと下向きへの意識の方が強い展開となっています。
PER(株価収益率)などのバリュエーション面で値頃感や割安感が指摘されていたり、需給面でも1月第2週より続いている外国人投資家の売り越しがそろそろ買いに転じるのではという期待もあるのですが、株式市場の上値を抑えているのは、通商をめぐる米中の応酬合戦が盛り上がりつつあり、先行きの不透明感が警戒されていることが大きいようです。
先月(3月)の初頭、トランプ米大統領が「輸入される鉄鋼やアルミニウムに対して追加関税を課す」と表明したのをきっかけに燻り出した、米国の保護主義的な経済スタンスに対する警戒感は、米中のやりとりを通じて現実味を帯び始め、次第に不安が高まってきています。
確かに、トランプ大統領の一連の動きは、「ビジネス的な交渉術として、最初に高いハードルを設定しているだけであり、徐々に妥協点を探っていくため、過度な心配は無用だ」という見方もありますが、交渉の背景に、秋に控えている中間選挙に向けて、国益や国際秩序よりも自身の支持層へのアピールが透けて見えることも、楽観できない理由のひとつになっていると思われます。
また、不安が高まっているもうひとつの理由として、先日まで「さすがにないだろう」とされていた米中の貿易戦争へのシナリオが「有り得るかも」というムードになってきたことも挙げられます。
そもそも、トランプ大統領が中国に対して発した関税強化の大義名分は「知的財産の保護」です。米国企業に限らず、中国でビジネスを行う外資系企業は、中国当局からの監視や干渉、規制を強く受け、実際に技術移転や情報提示を迫られることも珍しくありません。そのため、あくまでも関税強化は通商面で米国企業の対中ビジネス環境の改善を促すためのカードであり、米中の経済交流が活発化する方向で話が進むのであれば、結果オーライということになります。
ただ、現時点での中国の反応は、米国と同じく追加関税を課すものにとどまっているほか、今週発表された米国への追加関税の対象106品目の中に大豆が含まれていた点が不安の種となっています。実は、中国が輸入する大豆の約7割が米国産のため、米国に対してかなりの牽制になります。その一方で、大豆は中国で飼料として使われています。ゆくゆくは豚肉の価格に影響を及ぼし、物価上昇につながることになります。つまり、中国側にとっても追加関税の対象に大豆を加えたことはリスクを伴う措置であるわけです。
つまり、米中当局者の本音は判りませんが、結果的にチキンレースのような貿易戦争が進行する展開になってしまっているとも言え、今後もエスカレートしないという保証はありません。引き続き米中の動向に注意が必要と言えます。
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