FRB新議長の議会証言が相場の分岐点になるか?

2018/02/23

今週の国内株市場ですが、日経平均は今のところ22,000円台を挟んだ展開が続いています。テクニカル分析的にも、日経平均の株価水準は5日移動平均線を意識しながらキープしており、2月あたまに見せた株価急落時からはかなり落ち着きを取り戻してきました。

 

もっとも、急落前の株価水準にはまだ距離があります。1月23日の取引時間中につけた高値(24,127円)から2月14日の安値(20,950円)まで3,179円ほどの下げ幅だったのですが、22,000円辺りは下げ幅のちょうど「3分の1戻し」になります。ここから上値は重たくなっている印象です。22,000~23,000円は昨年の11月から年末にかけて2カ月間近くもみ合い、売買に厚みのある価格帯のため、買いの勢いが出にくくなるのは致し方ない面があります。様子を伺いながら次の展開を探っていると思われます。

 

次の展開とは、いわゆる「適温相場」後のシナリオです。これまでいいところ取りしてきた国内外の景気をはじめ、企業業績や金利、為替など、相場に影響する材料の関係性を再構築していくことになりますが、その中で注目されるのが米国の動向です。足元の長期金利の上昇や為替のドル安傾向は、景気拡大観測の高まりなのか、それとも財政に対する警戒の表れなのかといった具合です。

 

今週は米国でFOMC議事録(1月30~31日開催分)が公表されましたが、メンバーが米国経済やインフレ見通しに対して自信を深めていることが浮き彫りとなり、利上げを継続するスタンスであることを印象付ける内容でした。短期的に景気が過熱感を持って上振れるリスクを指摘するメンバーが複数いたことも分かり、利上げペースが早まる可能性も匂わせています。

 

議事録を受けた米国市場は、株式市場が下落、債券市場も下落(利回りが上昇)、為替はドル高という反応を見せましたが、次回のFOMC(3月20~21日に開催予定)での利上げを織り込みにいったものと思われます。

 

ただし、FRBの金融政策は出口戦略の歩を進めています。利上げはもちろん、国債などの保有資産の圧縮も、4月からは120億ドルから180億ドルへとピッチが早まる見込みです。これは米国債の買い手であるFRBの購入額が着実に減少することを意味します。これに加えて、トランプ大統領の経済政策(減税や財政出動)の財源確保のために米国債の発行も増額されると同時に、米国の財政赤字に対する不安も残ります。

 

つまり、利上げが思ったよりも米国景気を引き締め過ぎてしまう可能性があるわけです。それは先日の株式市場が急落した時に浮上したシナリオで、「3月のFOMCでは利上げを見送った方が良いのではないか?」という見方が増え、実際に、3月のFOMCでの利上げ確率が低下する場面がありました。

 

もっとも、次回のFOMCで利上げを見送ればよいかと言えばそうではなく、FRBが景気や市場動向に不安を抱き始めたと受け止められてしまうと、景気の先行き不安が台頭する可能性があるため、FRBは市場に対してしっかりとメッセージを発していく必要があります。そのため、来週(29日)にはパウエルFRB新議長の議会証言が予定されていますが、金融政策や経済の現状認識についてどのような見解を持っているのかが、今後の相場シナリオに影響を与える分岐点として注目されることになりそうです。

 

 

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