株式市場は楽観を取り戻せるか?

2018/02/16

連休明けとなった今週の国内株市場ですが、これまでのところ、先週の株価急落による軟調ムードを払拭できない展開が続いています。米国株市場では今週に入ってNYダウが続伸するなど反発の動きを見せているものの、日経平均は2月14日(水)の取引で節目の21,000円台を下回る場面を見せています。さすがに翌15日(木)は反発してスタートしていますが、いまいち米国株反発の流れに乗りきれていない印象です。

 

また、21,000円はちょうど200日移動平均線辺りになるのですが、200日移動平均線は約1年間の値動きの中心線ですので、この水準を下抜けてしまうと、下落トレンドが意識されやすくなります。さらに、過去を遡ると2015年の夏場(いわゆる「チャイナ・ショック」があった時期です)に、これまでの上昇トレンドから下落トレンドに転じた株価水準が21,000円でしたので、中長期のトレンド判断的に日経平均は踏ん張りどころに位置していると言えます。

 

もちろん、足元の株式市場の下落を「絶好の押し目買いのチャンス」という見方は根強く、実際に、日経平均構成銘柄の予想PER(株価収益率)は約13倍まで低下していて割安感が出てきています。ただし、これまでのところ目立った買いは出てきていません。一般的に、相場が急落した直後は大きく反発することが多いのですが、今回の日経平均は急落した先週2月6日のローソク足の長さの範囲内で荒い値動きを繰り返しており、「次の相場展開」を探っているようにも見えます。

 

つまり、需給的な売りが落ち着けば株価は戻りを試すと思われる一方で、ついこの間までの適温相場を謳歌していた「あの頃」とは違うムードを感じ取っているように思えます。確かに、「米国経済の強さが確認できた」と好感されてきた米経済指標が物価上昇への警戒感に変わったことや、トランプ大統領による経済政策が景気刺激への期待から、金利や財政面での不安観測を高める材料になるなど、これまでの買い材料が売り材料に転じたことは重要なポイントです。

 

足元の国内外の株価急落について、米NY連銀のダドリー総裁は「実体経済に変調はなく、大したことはない」と述べるなど、株式市場の混乱と実体経済の堅調さを分けて捉える向きが多いようですが、そもそも株価は景気の先行指標ですし、株や為替・債券など、金融市場の混乱そのものが実体経済に影響を与えるシナリオを無視すべきではないと思われます。2008年のリーマンショクの際、当時の財務大臣が株価急落を受けて「蜂に刺された程度」と述べていましたが、その後の国内外の景気がどうなったかはご存知の通りですし、さらに、今週14日(水)に発表された国内GDPの成長率が減速しているなど、実体経済に不安が全くないわけではありませんので、今回の株価急落が「秘めたメッセージを発しているかもしれない」ということは意識しておく必要がありそうです。

 

 

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