好調な米株市場は「好材料の先取り」なのか「リスクに鈍感」なのか?
今週の国内株市場ですが、日経平均は週初の11日(月)に終値ベースでの年初来高値を更新して始まったものの、そこからの上値は重たい展開が続いています。かといって、下値をトライするわけでもなく、これまでのところ相場が崩れた様子は感じられません。
確かに、出遅れ銘柄とされていた金融株が買われたり、今月はラッシュとなっているIPO銘柄などに物色の矛先が向かっているようです。今週13日(水)は、佐川急便を傘下に持つSGホールディングスのIPOが行われましたが、公募価格1,620円に対し、初値が1,900円となり、今年最大規模のIPOが順調な滑り出しを見せたことは良い材料と言えます。
そして、NYダウが連日で史上最高値を更新するなど、米国株市場の強さが続いていることも相場を支えています。その背景には拡大基調が続く景気や、法人税の減税を中心とした税制改革法案の成立への楽観視などが挙げられます。
また、今週は注目のFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催され、市場が予想していた通りの利上げが決定し、今後の利上げペース(2018年に3回の見込み)も従来の見通しから加速されなかったことが好感されました。さらに、税制改革法案についても、上下院の両議会で法案の一本化がまとまりそうな見込みとなり、年内の成立に向けて前進しそうなことが市場も追い風になっています。
確かに、米株市場の強さには株が買われる材料の存在があるわけですが、その一方で、リスクに対してあまり目を向けていない印象も受けます。株式市場の過熱感をはじめ、ロシア疑惑の捜査進展などのトランプ政権基盤の不安定化、北朝鮮や中東などの地政学的情勢の緊迫化などを織り込むような動きは今のところあまり見られません。
今週はNY市で爆弾テロが発生し、アラバマ州の上院補欠選挙では与党候補が敗れたりしましたが、売り込むほどの悪材料ではないにせよ、「ひとまず利益確定売り」のきっかけにもなっていません。株式市場が最高値を更新し続けているだけに、リスクが意識されはじめた際に大きく株価が調整する展開もあり得るため、少し注意した方が良いかもしれません。
また、現在は好材料を先取りしているように捉えられている税制改革法案についてもこれから注視する必要があります。
法案の目玉になっているのは、法人税の減税と、海外で稼ぐ米企業に本国への資金還流を促すいわゆる「レパトリ減税」です。本来、減税政策は景気が良くない時に行うのがセオリーですが、足元の米国経済は好調ですので、減税によって景気が余計に刺激されて過熱してしまうことになれば、引き締めのためにFRBが利上げペースを早めるシナリオも浮上してきます。
また、レパトリ減税で米国内に還流した資金の行方にも気を配る必要があります。有効な投資先があるのか、自社株買いを行うにしてもM&Aを行うにしても、すでに株価は上昇している状況です。さらに今回のレパトリ減税は恒久的なものとなるため、別に急いで資金を戻す必要がないと企業が判断すれば、思っていたよりもすぐに効果が出ないことも考えられます。
いずれにせよ、米国株の調整局面が近いうちに訪れることが予想されるため、その準備はしておいた方が良いかもしれません。
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