注意はしておきたい中国の「引き締め」
今週の国内株式市場ですが、日経平均は22,000円台半ばを中心としたもみ合いの展開になっています。11月29日(水)の取引終了時点では、積極的な上値追いのムードは感じられませんが、一方の下値は25日移動平均線がサポートとして機能しているため堅調な展開と言えます。しばらくはもみ合いを続けながら日柄調整をこなしていくシナリオが描けますが、来週末(12月8日)にはメジャーSQが控えており、一転して値動きが荒くなる可能性も考慮しておいた方が良いかもしれません。
最近の相場の上値を抑えている要因として挙げられているのは、これまで相場を牽引してきた半導体関連株が軟調になっていることですが、外資系金融機関が発表したレポートがそのキッカケとなりました。あらゆるものがネットで繋がるIoTや、機器の高度化などに伴い、今後も半導体の需要拡大は見込めるものの、足元では供給が急増して価格調整のリスクがあると指摘したという内容です。
また、中国経済への警戒感が高まったことも市場全体のムードを抑制しました。そのことが急に意識されたのは、日米の金融市場が休場だった先週11月23日(木)の上海総合指数が約1年ぶりの大きさで下落を見せたことです。その背景には、「中国当局が金融引き締めを強化するのではないか?」という警戒感です。
中国当局による経済政策は、いわゆる「景気刺激策」と、債務削減や資産バブルの抑制、国営企業改革など、痛みを伴う「経済システム健全化策」の両者でバランスをとっています。10月に開催された共産党大会までは、習近平政権の基盤強化のねらいもあって、景気を維持する方にやや重きを置いていました。
それが大会後になると、理財商品(シャドーバンキング問題に絡んでいる金融商品)の規制強化をはじめ、資産運用業界向けの統一的な規制ルール、ローンなどの個人向け貸出業務への監督強化などを次々と打ち出してきました。その矢継ぎ早とも言える動きが、債務問題やバブル懸念に対する中国当局の「本気度が高い」と受け止められ、金融引き締めへの警戒が一気に高まった格好です。債券市場では、中国の長期金利(10年債利回り)が節目の4%台に乗せる場面も見られました。
もっとも、2015年夏に見せた「チャイナショック」の教訓もあり、急激な引き締めには慎重な姿勢を維持するという見方は多く、今週に入ってからの中国金融市場は落ち着きを見せています。
中国経済の動向については、引続き当局の動向に左右されることになるわけですが、その当局は「すべてをコントロールできる」という考えが強い点には留意しておいた方が良いかもしれません。
例えば、中国ではアリババやテンセントなどの企業が手掛ける電子決済サービスの普及がものすごい勢いで加速していますが、これに対して中国当局は、これらの企業が持つ顧客の取引データの提供を求めるような動きが出始めていることや、企業内に共産党の組織を設けるよう促したりしています。さらに、今年の8月には、2018年中にすべての電子決済は人民銀行系の決済システムを経由するよう通達を出すなどの動きは、こうした考え方が反映されていると言えます。
当面の中国リスクは過度に心配するほどではなさそうですが、当局が手綱裁きを誤った時に大問題になると思われるため、注意しておく必要はありそうです。
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