無難に通過したFOMCに隠れた「タカの爪」

2017/07/28

国内企業決算シーズンが本格化した今週の国内株市場ですが、日経平均は今のところ節目の2万円を挟んだもみ合いが続いています。個別でみれば、好決算に反応して株価が上昇している銘柄は少なくはないのですが、市場全体としてはまだ積極的に上値をトライする動きにはなっていません。出口を模索しはじめた欧米金融当局や国内外の政局などの動向を睨みながら売買が手控えられているといった印象です。

 

そんな中、米国では今週(7月25日~26日)にFOMC(米連邦公開市場委員会)の金融政策会合が開催されました。今回は会合後にイエレンFRB議長の記者会見が行われないこともあって、政策自体の変更はないという見通しで、実際にその通り(政策金利の据置き)となりました。

 

この日の米株市場では、NYダウやS&P500、NASDAQといった主要3指数が、好調な企業決算を受けて揃って最高値を更新しましたが、FOMC後も大きな反応を見せることはありませんでした。

 

今回のFOMCで注目されていたのは声明文の内容でした。主なポイントは、(1)「量的金融緩和策によって拡大したバランスシートの縮小について」と、(2)「利上げの判断材料となる物価動向の認識について」の2点です。

 

実際の声明文では、(1)について「比較的早期に始める」、(2)については、前回の声明文にあった「目標の2%を幾分下回っている」という文章から「幾分」という文言が削除されました。基本的には、7月半ばに米議会で行われたイエレンFRB議長の議会証言の内容とさほど変わっていませんが、バランスシート縮小への意欲はしっかりアピールしつつ、利上げについては慎重なスタンスがあらためて示された格好です。

 

つまり、米国の金融政策の出口戦略は、バランスシートの縮小については「タカ派」、利上げにつては「ハト派」ということになります。利上げペースの鈍化観測を反映してか、為替市場ではドル安(円高)で反応していますし、無理して利上げをすることによる米国景気への悪影響も一部で懸念されていたこともあって、先程も述べた通り、足元の好調な米国株市場(適温相場)は今回のFOMC声明文のハト派的な部分を好感している面があると言えます。

 

今後の米金融政策絡みのイベントとしては、8月24日~26日に米カンザスシティー連銀が主催する経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)や次回のFOMC(9月19日~20日)が予定されています。まだジャクソンホール会議にイエレンFRB議長が出席するかは未定ですが(ドラギECB総裁は参加予定です)、次回のFOMCでは、「タカ派」姿勢のバランスシートの縮小が決定されるのではと見方が多くなっています。

 

足元ではあまり警戒されていないですが、バランスシートの縮小が決定されれば、いよいよ量的緩和策の出口が始まることになります。ただ、量的緩和策はそもそも、金利政策での対処で間に合わなかったために導入された「非伝統的」な金融政策だったことを踏まえると、マーケットに対して爪を立てる可能性があるため、注意しておく必要があるのかもしれません。

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