VIX指数の低下はリスクオンの号砲なのか

2017/05/12

VIX指数の低下はリスクオンの号砲なのか

 

大型連休明けとなった今週の国内株市場ですが、日経平均は大台の2万円を窺う水準にきています。

 

日経平均のチャートを辿ると、3月下旬に始まった下落トレンドは4月17日に底を打ち、その後は急ピッチで上昇している形を描いています。4月17日の安値が18,224円でしたから1,700円以上の上昇幅を見せ、また、今年に入ってから何度となく跳ね返されてきた「19,600円台の壁」もあっさり上抜けてきました。

 

この足元の上昇をさらに分けると、大型連休を挟んで二段階で上昇してきたことが判ります。連休前は、北朝鮮情勢や仏大統領選挙などの外部要因のひとまずの薄らぎと米国景気、トランプ政権運営能力へ評価が見直された格好で、これまでの下落分を取り戻し、連休後の上昇は米利上げ観測とそれに伴う企業業績の上振れ期待をやや先取りしているような動きです。

 

株式市場を取り巻く環境はかなり改善している印象ですが、そのひとつの表れとして、VIX指数が最近話題になっています。VIX指数とは米主要株価指数であるS&P500を対象とするオプション取引の値動きを元に算出された指数のことで、別名「恐怖指数」と呼ばれています。この指数の値が高いほど、投資家の不安心理が強いとされているのですが、最近のVIX指数は逆に低下しており、連休明けには1993年12月以来、約23年ぶりの低さになっています。

 

恐怖指数が歴史的な低下を見せていることで、不安心理の後退、つまり「リスクオン」と受け止められる見方もありますが、そもそも、VIX指数は予想される値動きの大きさを示しているもので、数値が大きいほど今後の値動きが荒っぽくなりそうだということを意味しています。ですので、VIX指数の低下は先行きの相場があまり変動しなさそうだと見ることができ、必ずしも楽観強気ムードで株価の上昇を示すものではない点には注意が必要です。

 

日本株の急上昇の裏には、相対的に他国の株式市場に比べた出遅れ感も要因のひとつになっていますが、米S&P 500指数は連日で史上最高値を更新し、PER(株価収益率)の面でも割高感が漂い始めています。

 

国内では、まもなく企業決算発表シーズンを終えようとしています。全体的には概ね堅調で、日経平均はバリュー的に2万円をつけてもおかしくはないと思われますが、外部要因への警戒や米利上げ観測はまだ変動要因として燻っており、VIX指数の低下が示すほど、高めのPERを許容できるほどの余裕はないと言えます。そのため、今後は日本株の出遅れというよりは、米国株市場の過熱感の方が意識されやすく、調整含みで株価の落ち着きどころを探る展開となる可能性には注意が必要かもしれません。

 

 

 

 

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