急ピッチで進む「統合型リゾート整備推進法案」
これまで何度も議論が浮上しては進まなかった、カジノを中心とする「統合型リゾート施設整備推進法案(IR法案)」ですが、最近になって動きが慌ただしくなってきました。
先週の12月2日に衆議院内閣委員会で採決された後、今週6日には衆議院本会議で可決されて参議院に送られました。14日の臨時国会会期末までに成立する可能性が高くなっています。
ギャンブル依存症者の増加をはじめ、反社会的勢力の介入やマネーロンダリング、治安面などの懸念がある中、衆議院内閣委員会での審議時間はわずか6時間と短く、しっかりと議論が行われたというよりは、急ピッチで法案成立に向けて突き進んでいる印象です。
そもそも、法案の反対意見のほとんどがカジノというギャンブル面の不安ばかりが目立つということ自体、議論が深まっていないことを示しています。これまで「カジノ法案」という通称がまかり通っていたせいかもしれませんが、今のところ、カジノの是非についての意見が中心です。
言葉の通り、「統合型リゾート(IR:Integrated Resort)」とは、カジノだけでなく、特定の地域にホテルやショッピングモールや娯楽などの商業複合施設、国際会議場などを集約して、国内外から多くの人を呼び込もうとするものです。安倍政権は2020年までに訪日観光客数を4,000万人にするというのを目標にしていますが、IR法案は目標達成のための追い風になることが期待されます。
そのため、例えば、「関西国際空港という玄関口があることや、京都や奈良といった古都も近くて観光面でも有利なので大阪に統合型リゾートを造るのが良いのでは?」といったように、将来性や本来の趣旨を踏まえ、立地から運営方法まで、どのような統合型リゾートを作って行くのかという前提条件をもっとしっかりと議論する必要があります(あくまでも例であり、必ずしも大阪にすべきという訳ではありません)。
また、米国のカジノといえば、ラスベガスとアトランティック・シティが思い浮かびますが、ラスベガスはカジノだけでなく、エンターテイメントやショッピングなどリゾートとしての多角化に成功し、非カジノ収入が60%を超えるほどになっている一方で、カジノにこだわりすぎたアトランティック・シティについては衰退傾向が指摘されています。
よって、「カジノは儲かる」という経済的側面だけで押し切ってしまうのも少し危うい面があります。ギャンブルとは誰かが勝てば誰かが負けるゼロサムゲームですので、短絡的に言ってしまうと、観光客からお金を巻き上げる仕組みです。カジノだけで継続的に観光客を呼び込むのは難しいですし、早くもカジノ運営にいくつかの外資系企業が名乗りを挙げ始めています。日本のカジノで巻き上げられたお金が外資系の運営会社に流れてしまうということも考えられます。
今回の法案は「統合型リゾート」の解禁にとどまるため、むしろ成立した後の進路が重要になると言えそうです。
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