「掌返しのラリー」はいつまで?
米大統領選挙から一週間が経ちましたが、その期間の日経平均の動きを辿ると、投開票時こそ急落したものの、その後は上値をトライし、節目の18,000円台も視野に入る水準まで来ています。選挙前の金融市場では、「もしトラ(もしもトランプが大統領になったら)」リスクという言葉が踊り、警戒されていたのが、いざ終わってみれば、「トランプラリー」、「トランプノミクス」と前向きな表現に置き換えられ、掌を返したような反応になっています。
トランプ氏勝利という結果は元々、実現の可能性が低い、もしくは回避したいシナリオだったのですが、それが現実のものとなってしまった以上、受け入れざるを得ません。ギリシャ神話では、開け放たれたパンドラの箱から多くの災いが飛び出しましたが、箱の底には「希望」が残されていたと言います。選挙活動期間の過激な発言や政策への言及だけを捉えれば不安は多々ある一方で、選挙後の勝利演説で壇上に登ったトランプ氏の言動が比較的「まとも」な印象を与えたことや、出自がビジネスマンということもあって、利害のバランスをとりながら政策運営していくだろうという期待感も一部で高まり、希望を見出したのかもしれません。
選挙後の金融市場が好感している「トランプノミクス」のポイントは、(1)法人税や所得税などの減税やインフラ投資など、財政出動による景気刺激策と、(2)オバマ政権時に成立したドット・フランク法の見直しといった金融規制の緩和策です。選挙前のシナリオ(クリントン氏勝利による民主党政権誕生)では、増税と金融規制強化が実行されると思われていたこともあり、好感されやすい面があったと言えます。米株市場では公共投資関連や金融株を中心に買われたほか、景気刺激策の思惑による米長期金利の上昇でドル高が進行し、国内株市場でも同様に、金融株や円安を受けた輸出関連株が買われる動きとなりました。
とはいえ、トランプ次期政権の行方はまだ見えてこない部分が多いのも事実です。トランプ氏の政策は、先ほどのポイントのように、「きちんと実行して欲しいもの」だけでなく、保護貿易や移民政策、安全保障の面では「きちんと実行されては困るもの」も混在しています。後者については、意外と「大人の」対応をするのではという期待感に支えられている面もあります。
さらに、米長期金利の上昇とドル高基調がこのまま続けば、FRBの利上げペースに影響が出るかもしれないことや、緩やかな米金利上昇が前提となっていた新興国にとっては、資金流出や景気への悪影響が出ないとも言い切れません。となると、日米金利差拡大による円安が、新興国不安のリスクオフによる円高に転じる可能性も出てきます。
また、トランプ氏自身が今回の勝利を想定していなかったとすれば、現在、急ピッチで脇を固める人事や政策の策定に取り掛かっていることになり、具体的な政策や方針が明らかになるにつれ、いったん冷静になる場面が遠からず訪れることになりそうです。
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