香港株市場で盛り上がりを見せるテック相場
今週の株式市場ですが、日経平均は19日(水)の取引終了時点で、相変わらず方向感は出ないものの、39,000円台を維持する堅調な展開となっています。その一方で、海外株市場に目を向けると、とりわけ香港株市場の上昇が目立っています。
この香港株の上昇は、いわゆる「DeepSeekショック」が訪れた1月27日あたりから始っています。
低コストかつ短期間で開発され、性能も既存の米国AIモデルに引けを取らないとされる「DeepSeek R1」の登場とインパクトは、米国株や日本株市場にとっては株価下落の材料となりましたが、香港株市場では、中華AIへの関心を高めることにつながり、上昇のきっかけとなりました。
実際に、香港株市場では、テンセントや美団、アリババといった、テック銘柄が大きく上昇しているほか、米国の「M7(マグニフィセントセブン:偉大な7銘柄)」に準える格好で、「T10(テリフィックテン:素晴らしい10銘柄)」という言葉も登場するなど、かなりの盛り上がりを見せている印象です。
ちなみに、テリフィック10に該当するのは、EコマースのアリババやJDドットコムをはじめ、自動車製造のBYDと吉利、スマホだけでなく、EV(電気自動車)にも進出した小米(シャオミ)、ネットサービスのテンセントや百度(バイドゥ)、ネットイース(網易)、食品デリバリーの美団、半導体製造のSMIC(中芯国際集成電路製造)の10銘柄です。
また、こうした香港株市場の盛り上がりが一時的なものではなく、意外と長く続く可能性もありそうです。その背景にあるのは、今週の17日(月)に、あるシンポジウム(座談会)が北京で開催されたことです。
そのシンポジウムは、中国の習近平主席が主宰し、大手民間企業の幹部を人民大会堂に招いて行われました。習近平主席が自ら民間企業のキーマンと意見交換するということ自体が珍しいのですが、それだけでなく、アリババグループ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏も招待されたことが注目されています。
同氏は2020年の10月に、金融監督当局に対して、「技術革新を阻んでいる」という批判を行ったことで中国政府の怒りを買ったとされ、同年11月に予定されていた金融子会社のアント・グループのIPO(新規上場)が直前になって取り消されただけでなく、独占禁止法違反の疑いがあるとして、アリババグループに調査が入って多額の罰金を課され、結局、馬雲自身も表舞台から姿を消すことになりました。
そして、この出来事をきっかけに、「力を持った民間企業が政権への抵抗勢力になる」ことを危惧した中国政府は、他の民間企業に対しても、規制強化などの締め付けを行い、こうした動きは2022年3月に当時の劉鶴副首相が「資本市場にとって好ましい政策措置を打ち出す」と表明するまで続きました。
今週開催されたシンポジウムは、事の発端となった馬雲氏が参加したことによって、政府の民間企業に対する政策スタンスが明確に変わったことを意味する、政治的なメッセージの強いイベントとなった可能性が高く、当面の間、香港株市場の上昇を後押しする追い風になったと思われます。

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