「ギャップ」を抱えてスタートした2025年相場

2025/01/10

2025年相場がスタートした今週の国内株式市場ですが、これまでのところ、少し値動きが荒い展開となっています。日経平均の推移でもう少し細かく見て行くと、大発会の6日(月)は前営業日比で587円安、翌7日(火)は776円高、そして続く8日(水)は102円安となり、節目の4万円台を挟んで株価が上下する展開となっています。

日経平均は昨年10月より、3万8,000円から4万円のレンジ相場が続いていましたが、ようやく、このレンジを上方向に抜けつつあるような動きを見せていることで、株式市場の基調自体は悪くないと言えそうですが、株価動向の背景を探って行くと、過度な楽観は禁物かもしれません。

まず、大発会の株価下落ですが、年末年始の米国株市場が微妙な展開だったことが影響しました。米国市場では、米10年債利回りが昨年末あたりから4.5%台で高止まりしており、その傾向は6日(水)現在も続いています。米国の堅調な景況感を示す経済指標が相次いでいることや、1月20日から正式に発足するトランプ次期政権が実施する政策の影響でインフレが再燃するのではという警戒感が米金利高の背景にあります。

この、「トランプ政権がもたらすかもしれない」インフレは、景気を刺激し過ぎることによるインフレをはじめ、関税強化や移民政策強化によるコスト増がもたらすインフレ、そして、政策を実施する上での財政悪化によるインフレなど、複数の経路が考えられるだけに、「どの政策がどう影響するのか?」といった見通しを立てるのは現時点では難しい状況です。

一般的に、金利上昇は株式市場にとって重石となるのがセオリーです。高金利によって、企業が資金調達を行うのが難しくなり、経済活動が抑制的になってしまう懸念があるほか、株式の益回りと国債の利回り格差が縮まることによって、リスク資産である株式の割高感が強まり、安全資産の債券に資金が向かいやすくなるという理屈です。

ただし、足元の株式市場が見せている印象は、そこまで警戒感が高まっていないように思われます。金利上昇が追い風となる銀行株が買われているほか、半導体をはじめとするハイテク株が大きく買われていることが株式市場を支えている格好です。

とりわけ、ハイテク株買いについては、1月5日に台湾の鴻海精密工業がAI向けサーバーの好調で、2024年10月から12月の売上高が過去最高になったと発表したほか、米国で今週開催されている「CES(デジタル技術見本市)2025」で講演した、米エヌビディアのジェンスン・ファンCEOが今後の事業展開について強気の見通しを語ったことなどによって、「AI相場」が息を吹き返したように思われます。

とはいえ、それ以外の多くの銘柄は株価が伸び悩んでいるほか、市場全体が警戒している状況の割に、株価指数への寄与度の高い一部の銘柄が賑わうことで株式市場が好調に見えるという、「ギャップ」が少なからず生じていると思われます。今週末の10日(金)には、注目の米雇用統計が控えていますが、「米国の経済指標などの景況感を手掛かりに金融政策への思惑が働き、金利が動いて、株式市場が反応する」というのが、基本的な相場の見方となります。

したがって、2025年相場の株式市場は、温度感が掴みにくい中での船出になったと思われます。

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