「日本株はファンダメンタルズ、テクニカルの両面で正念場を迎える」

2024/07/26

今週の国内株市場ですが、これまでのところ軟調な展開が目立っています。日経平均は24日(水)の取引終了時点で6日続落、この期間の下げ幅合計も2,120円と大きなものとなっています。25日(木)も大幅安で取引をスタートさせており、相場ムードの雲行きが怪しくなりつつあります。

また、この期間の為替市場にも目を向けると、円高が進行しています。先週は米国から「トランプ・トレード」の風が吹いていましたが、その中にトランプ氏が日本円や中国人民元に対して米ドルが高過ぎることを懸念する発言があったことが材料視されました。

さらに、日本国内からも、先週から今週にかけて、河野デジタル大臣をはじめ、岸田文雄首相や茂木自民党幹事長が相次いで、為替の円安や日銀の利上げに関する発言が相次いだことで、1ドル158円台から153円台へと円高方向へと動いています。

このように、直近で演じている国内株の下落基調は、為替の円高傾向が大きな要因になっているわけですが、とりわけ、国内政治家からの発言が出てきたことが大きく影響し、「政府と日銀が協調して円安是正を進めるのでは」との思惑につながっています。これにより、来週の日銀金融政策決定会合への見通しが不透明になったことや、足元で本格化しつつある企業決算についても、円安効果が後退することで、業績期待も盛り上がりにくくなっている印象です。

これまでの株式市場は円安を前提に動いてきた面がありますが、足元の円高の流れは、いわゆる「円キャリートレード」の巻き戻しも誘っていることも考えられ、しばらく続く可能性があります。

また、米国株市場でも、バイデン大統領が選挙戦からの撤退を表明したことで、トランプ・トレードはいったん落ち着くと思われますが、その後についても「トランプ再選シナリオ」の実現可能性がポイントとなり、選挙戦の動向が米国株に影響し続けることが考えられます。

もっとも、米国の金融政策は9月の利下げと12月の追加利下げを織り込みつつあるほか、景気のソフトランディング見込みが相場を支える見通しとなっていますが、一般的に、金融政策と景気のソフトランディングとの関係は、「利下げ開始後、3年間リセッション(景気後退)を回避」、そして、「利下げ打ち止めから再び利上げを開始」できれば、ソフトランディング成功と見做されます。過去において、ソフトランディングに成功したのは、1966年、1984年、1995年の利下げ開始時の3回です。そのため、ソフトランディングの実現が試されるのはこれからとなります。

テクニカル分析的にも、24日(水)時点での日経平均は、日足チャートでは75日移動平均線、週足チャートでは13週移動平均と26週移動平均線あたりまで株価が下落しており、それぞれの移動平均線がサポートとして機能できるかが焦点となります。25日(木)取引開始時はこれらの線を下抜けてしまいましたが、75日と13週移動平均線は3カ月間の値動きの中心線でもあり、中期的なトレンドを示す線とされていますので、早い段階で回復できなければ、下落基調が続く展開も想定され、正念場に差し掛かっていると言えます。

したがって、足元の相場環境はかなり不安定となっていますが、下値で買いが入り、再び上昇していくための値固めができるか、それとも、このままもうしばらく下落基調が続いてしまうのかどうかは、決算を通じた企業業績の動向がカギを握ることになりそうです。

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