「『3中全会』で中国株は息を吹き返すか?」

2024/07/12

今週の株式市場ですが、これまでのところ、前週からの株高基調続き、日米の株価指数が高値圏を維持する展開となり、とりわけ、日経平均や米S&P、NASDAQについては今週も最高値を更新する場面を見せています。

さすがに、予想PER面での割高感も出てきていますが、間もなく本格化する日米の主要企業の決算発表シーズンで、市場の期待に応えられるものが増えてくれば、さらなる株高も見込めそうです。

こうした日米の株式市場とは反対に、低調な値動きとなっているのが中国株市場です。香港ハンセン指数と上海総合指数はともに、5月20日に高値をつけて以降、下落トレンドが続いています。

その中国では、来週の15日~18日にかけて、注目の政治イベントである、「3中全会」が開催されます。3中全会とは、中国共産党の中央委員会が開催する第3回目の全体会議のことを指します。

現在の中国共産党による政権運営においては、5年ごとに開催される共産党の党大会で中央委員などのメンバーが選出され、その後に、そのメンバーが集まる全体会議が複数回開催されます。特に、3回目となる3中全会は、中朝的な経済政策の方針が示されることが多く、過去に遡ると、1978年の時には「改革・開放路線」が打ち出されたほか、1993年の時には「社会主義市場経済体制の確立」が示されるなど、注目度が高くなる傾向にあります。

また、3中全会は、党大会の約1年後に開催されるのが慣例となっていますが、今回については、党大会が2022年10月の開催で、本来であれば、昨年(2023年の秋)には開催されるはずだったのが、現在まで延期されていたことも様々な憶測を呼んでいます。

そのため、今回の3中全会については、経済政策絡みのメッセージが発せられることが多いことや、不動産セクターを中心とする債務問題の拡大や、それに伴う景気減速懸念への対処などが求められていることから、中国経済復調に向けた期待も多いようです。

ただし、3中全会では、大まかな方針は示されるものの、具体的な政策にまで踏み込むことは考えにくいですし、現在の習近平政権に移って最初に開催された2013年の3中全会では、これまでのキーワードとなっていた「改革開放」よりも、「改革深化」が新たなキーワードとして浮上し、その後の政権は、経済政策運営の権力集中や、民間企業への規制強化、国有企業の優遇といった具合に、実は、中国経済もしくは世界経済にとって好ましくない方向へと進んでいます。

そもそも、GDP成長率が5%を超える国の株式市場が低迷を続けていること自体に違和感がありますので、「3中全会で中国株市場が息を吹き返す」という見方については慎重な姿勢で臨むのが良いかもしれません。

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