「米エヌビディア株の上昇が終わるとき」

2024/06/21

先週の日米「金融政策イベント」や、「需給イベント(メジャーSQ)」を通過して迎えた今週の株式市場ですが、日経平均が週初6月17日(月)の取引で、前週末比700円を超える急落を見せ、波乱含みのスタートとなりました。その後は持ち直して株価を戻す動きとなったものの、20日(木)には再び下落に転じるなど、これまでのところ、不安定な推移が続いている格好です。

その一方で、目立って強い動きを見せているのが米NASDAQ総合指数です。19日(水)の取引終了時点で8連騰となっているほか、最高値も連日で更新しています。そして、その中心で株価指数を牽引しているのが、米半導体企業のエヌビディアです。18日(火)には、エヌビディアの時価総額(3兆3,352億円)が、マイクロソフト(3兆3,173億ドル)を上回り、世界トップとなりました。

こうしたエヌビディア株の強さの背景には、データセンター向けのAI半導体で約8割のシェアを持つ競争優位性をはじめ、毎年のように主力製品であるGPU(画像処理半導体)のアップグレードを続けている成長持続性などが挙げられます。

通常の場合、株価の上昇に伴って割高感も高まり、やがて天井を打つことになるのですが、エヌビディア株の場合は、「稼ぐチカラ」が強く、株価上昇を上回る速度で業績が伸びているため、現時点では、むしろPER(株価収益倍率)で見た割高感は低下しています。実際に、2021年から現在までのエヌビディア株価は約10倍まで上昇しましたが、PERは70倍台から40倍台へと低下しています。

とはいえ、いつまでもこの上昇を続けることは不可能ですし、いずれは上昇相場の終焉を迎えることになります。

そこで、エヌビディア株の上昇が終わるきっかけや要因などについて考えて行くと、まず、浮上してくるのは、「エヌビディアの業績と収益見通しが市場の期待に応えられなくなったとき」になりますが、この点については、現在のエヌビディアが市場の期待以上に業績を伸ばしているため、現時点での警戒感はまだ低いと思われます。

むしろ、注意したいのは、「AI」というテーマに対する市場の見方の変化の方かもしれません。

AIの持つポテンシャル(生産性の改善、技術革新のスピードアップなど)への期待は高く、AIの開発や、データセンターの開設など、積極的な設備投資が活発化し、それに伴うGPUの需要が増加している状況となっていますが、これらの投資が収益化されるまでに、思ったよりも時間が掛かってしまうことや、景気減速による設備投資意欲の減退などが懸念され始めています。

また、AI向けのデータセンターは大量の電力を消費するため、データセンターの増加は今後のエネルギー確保やエネルギー価格への影響が出てくることも考えられます。

さらに、AIへの期待が高い一方で、「ディープフェイク」や「データ・ポイズニング」など、社会の混乱を招きかねないリスクもはらんでおり、こうしたリスクが政治問題化して、規制強化などの動きにつながることがあるかもしれません。11月に米大統領選という政治の重大イベントも控えています。

上昇相場を謳歌するウラで、AIを取り巻く環境の変化に注意する必要がありそうです。

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