「市場ムードは改善も上値追いはまだ先か?」

2024/05/10

大型連休明けで迎えた今週の国内株市場ですが、日経平均は38,000円台をキープし、安定的な株価推移ではあるものの、75日移動平均線を意識した攻防戦が続いており、これまでのところ、相場自体に方向感が出ていません。

その一方で、米国株市場に目を向けると、NYダウやS&P500、NASDAQといった主要株価指数が上昇し、それぞれ株価水準を切り上げています。

直近で公表された米経済指標では、景気の減速感やインフレ進行の一服感を示すものが増え、さらに、先週通過した米FOMC(連邦公開市場委員会)でも、予想以上のQT(量的縮小)ペースの緩和が決定されたことや、警戒されていた利上げ再開シナリオについても、パウエル米FRB議長が記者会見で否定し、「次の一手」が利下げであることも安心感をもたらし、こうしたムードの改善が株高につながっている格好です。

とはいえ、日米の株価指数の水準は4月の下落分を挽回するほどではなく、積極的に上値を追えるだけの先高観はまだ醸成されていない印象です。実際に、相場の物色動向を探っていくと、これまでの牽引役だったグロース株(ハイテクやIT関連など)が失速気味で、景気敏感株やディフェンシブ株への選好が目立っています。

もっとも、これまでに発表されたグロース株の決算は全般的に好調なものが多く、それでも株価の上値トライにつながらなかった背景には、「先取りし過ぎた業績期待の修正」が行われていることが考えられます。

実際に、現時点でのS&P500の予想PER(株価収益率)は約20倍台なのですが、長期的な平均が15~16倍台であることを踏まえると、まだ割高な状態であると言えます。現在のPERを正当化するだけの業績期待へのハードルはかなり高く、景気敏感株とディフェンシブ株の物色だけでは相場を支えることができても、株価の上昇の起爆剤としてはやや弱いと思われ、株価が直近高値付近まで上昇した場合には、戻り待ち売りが出やすくなることも想定されます。

そのため、今後の株式市場が上を目指せるのかについては、これまで見てきたように、ファンダメンタルズの改善とバリュエーションとの綱引きが続く中、引き続き、景況感やインフレ動向に絡んだ金融政策への思惑がカギを握ることになります。

目先では、市場が注目する米国の消費者物価指数や小売売上高(ともに4月分)が公表される来週15日がターニングポイントになるかもしれません。

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