「中期シナリオの再構築」

2024/05/03

国内大型連休の谷間で3営業日となる今週の国内株市場ですが、日経平均はこれまでのところ、75日移動平均線を挟んだ推移となっています。75日移動平均線は約3カ月間の値動きの中心線でもあるため、ここでの攻防戦は「中期的なシナリオの方向性を探っている」印象です。

日米の決算シーズンも佳境に入りつつありますが、決算内容に個別で反応する動きが見られるものの、全体としては相場のムードを大きく変えるような流れは今のところ生じておらず、結局は日米の金融政策への思惑によって株価指数が上下している展開が続いています。

国内では、先週に日銀金融政策決定会合が開催されましたが、足元の急ピッチな為替相場の円安に対して、牽制するような発言が植田総裁から出なかったことから、1米ドル=160円台まで円安が進む場面があり、その後の為替介入観測などで円高に振れるなど、慌ただしい値動きを見せています。

これまでは「円安は輸出企業が多く上場している日本株市場にとって追い風」とされてきましたが、最近では、輸入物価の上昇による内需企業や国民生活への圧迫など、「自国通貨の価値低下がもたらす国内経済への影響」を懸念する視点も高まっていますので、今後も円安傾向が続くのであれば、「日本経済がイマイチでも海外で稼いでいる日本企業の株は買える」という切り口で銘柄の選別が進むかもしれません。また、目先の為替介入や、GPIFのポートフォリオ見直しなどの円安対策の動向が影響を与えることも考えられます。

一方、今週1日(水)に終了した米国のFOMC(連邦公開市場委員会)では、政策金利の据え置き、QT (量的引き締め)のペース減速が決定され、その後のパウエルFRB議長の記者会見でも今後の利上げシナリオの可能性が否定されたことなどによって、総合的に「ハト派」として受け止められて米国株式市場が大きく上昇する場面がありました。

確かに、米金融政策当局からのメッセージは市場に安心感をもたらした格好ですが、ただし、インフレについては、想定していたよりも根強く、さらに地政学的情勢によるインフレ進行も考えらえるほか、景況感についても、減退を匂わせるような米経済指標が増え始めていること、これまでの相場の牽引役だった米半導体企業の株価が決算を受けて下落するものが目立ち始めているなど、実際に起きている現実に目を向けると、あまり楽観できる材料が少ないため、結局この日の米国株市場は、NYダウが小幅高だったものの、S&P500とNASDAQが下落して取引を終えています。

このように、足元の株式市場の下値は比較的しっかりしているものの、株価が反発した際に、その勢いを加速させる「燃料」が不足気味となっていると考えられるため、冒頭でも触れたように、しばらくは、株価のもみ合いを続けながら、中期シナリオを再構築していく動きになるかもしれません。

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