中国株市場で取引される日本株ETFについて
今週の国内株市場ですが、日経平均が36,000円台に乗せ、23日(火)の取引では37,000円台目前に迫る場面があるなど、これまでのところ株価水準を切り上げる動きとなっています。注目イベントの日銀金融政策決定会合後に売りが増え始めている点は気掛かりですが、相場のムードはまだ上方向への意識が優勢となっている印象です。
2024年相場に入り、海外からも関心を集めることが増えた日本株ですが、先週に「中国上海株市場で取引されている日本株ETFの取引が過熱感を背景に一時停止」という報道をきっかけに、日本株が売りに押される場面がありました。
中国で取引される日本株ETFは数銘柄あり、今回の話題となったのは、「華夏野村日経225ETF(上海市場の証券コード513520)」です。1月17日に、取引開始時刻から1時間の売買停止という規制がかかったのですが、この措置は今週の24日(水)まで連日で実施されています。年初から1月17日までの日経平均の上昇率は約6%だった一方で、このETFは22%まで上昇する場面があり、取引がかなり過熱していました。
「中国人投資家が積極的に日本株を売買している」ことの表れではありますが、では、こうした中国人投資家の動きが、今後の日本株に大きな影響を与えるのかというと、実はあまり気にしなくても良いかもしれません。
というのも、今回対象となったETFは、東証に上場する「野村NF日経225連動型ETF(1321)」を保有するだけのシンプルなETFで、純資産残高は6億5800万元(約130億円)と、あまり大きくはありません。中国の投資家は海外への資本移動が制限されているため、QDII(適格境内機構投資者)など限られたルートでしか海外資産に投資することができません。
QDIIとは、主に中国の機関投資家が当局の許可を受けて海外の金融市場に投資できる制度です。また、このQDIIには投資できる金額が設けられており、2023年末時点では全体で1,655億ドルです。設定額の限度があるため、今回のように日本株への需要が高まったからと言って、新たに日本株を買ってETFを追加発行することは困難です。
そのため、中国で過熱している日本株ETFの売買は、「限られているETFの口数に対して需要が殺到しているため、プレミアム価格になっている」という状態であること、また、今回対象のETFの純資産規模(約130億円)から見ても、日本株市場への直接的な影響は限定的であると言えます。
さらに、日本株ETFに限らず、米国株ETFも今週の23日(火)に売買の一時停止措置が実施されました。また、中国株市場では、上海総合指数は、習近平体制が3期目に入った時につけた2022年10月の安値を下回ったほか、香港ハンセン指数も同じく2022年10月安値近辺まで株価水準を切り下げています。
中国の投資家の資金が中国国内ではなく、海外への投資需要が高まっていることは、それだけ景気を含めた中国の状況の悪化と、見通しのネガティブさを表していることの裏返しでもあり、注意すべきは中国市場でのETFの売買よりも、中国の経済後退による海外企業の業績や景気への影響の方なのかもしれません。
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