日銀会合後に反発した日本株は上値を追えるか?

2023/12/22

今週の国内株市場ですが、これまでのところ大きく反発する動きが目立っています。日経平均は節目の33,000円台を回復したほか、20日(水)の取引時間中につけた高値(33,824円)が、これまでの高値(6月19日の33,772円)を超える場面もありました。

注目イベントだった日銀金融政策決定会合の結果が現状維持だったことを受けて、相場は警戒感の後退による買い戻しや、上昇基調が続く米国株市場にキャッチアップする動きに一気に傾いた印象です。日銀会合を通過した19日(火)と20日(水)の日経平均の上昇幅は900円を超えています。さすがに21日(木)の取引は下落スタートとなりましたが、市場では早くも、「日経平均の高値更新後にどこまで上値を伸ばせるか?」の意見も出始めている模様です。

確かに、日銀会合の通過で目先の警戒感が後退したほか、好調な米国株市場に牽引される形で日経平均の高値更新をトライする展開も想定できますが、あまり深追いし過ぎないように構えるのが良いかもしれません。日銀会合後の日経平均は大きく上昇していますが、TOPIXの上昇はそれほど大きくはなく、20日(水)の取引終了時点では25日移動平均線が上値の抵抗となっている様子がうかがえます。

また、日銀会合後の植田総裁の記者会見において、早期の政策修正に踏み込んだ言及がなかったほか、市場が注目していた、「年末年始の政策運営がチャレンジングなものになる」といった発言についても、「仕事への姿勢一般についての答弁」という見解を示したことで、結果的に金融政策の修正観測が遠のいたわけですが、今後の市場との対話という面で捉えると、日銀からのメッセージが読みにくくなったことや、今回の会合で新藤経済財政相が出席していたことが影響したのではという憶測も不透明感を強めそうです。いずれにしても、次の日銀の一手が金融政策の正常化であることには変わりはなく、為替市場もある程度まで円安が進んだところで一服すると思われ、イベント通過による株高が限定的になる可能性があります。

さらに、好調を続けている米国株市場でも、主要株価指数(NYダウ・S&P500・NASDAQ)が揃って7週連続の上昇となっているため、そろそろ相場の過熱感が意識されるタイミングであるほか、米金融政策の利下げを先取りして織り込んでいる面があります。

米国の政策金利はすでに利上げが打ち止となり、当面は政策金利が維持されたあと、景況感を見極めながら利下げへと転じていくという見通しが優勢ですが、現段階の株式市場がすでに利下げを先取りしているのであれば、足元の株価が上昇するほど、いざ利下げ実施が見えてくるタイミングで株が売られる確率が上昇することが考えられます(「噂で買って事実で売る展開」)。

実際に、過去の政策金利の動きを辿ると、利下げに転じてからしばらく経った時点でもれなくリセッション(景気後退局面)入りしています。現在の市場は米景気後退に対して「ソフトランディング」を前提としていますが、今後は利下げ幅が注目されることになりそうです。0.25%刻みで段階的な利下げを実施できるのというのがソフトランディングシナリオの描く道筋ですが、0.5%など利下げ幅が大きくなった場合には、「利下げ幅を大きくしなければならないほど、景気が後退している」という側面が浮き彫りとなることもあり、中長期的には株式市場が大きく下落する場面を想定しておく必要があるかもしれません。

したがって、「株高の宴」がどこまで続きそうなのかを探ることが年末年始の相場の焦点になりそうです。

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