米金利低下と株価上昇

2023/11/10

今週の株式市場ですが、日経平均の値動きを辿ると、先週からの株価上昇の流れに乗って、週初の6日(月)に一段高でスタートしたものの、その後は伸び悩む展開となっています。テクニカル分析的には11月1日(水)、2日(木)、そして6日(月)の株価上昇が、「窓」空けを伴っていて、いわゆる「三空踏み上げ」を形成していただけに、目先は売りに押されている印象です。

また、先週の株式市場は日本株だけでなく、米国株市場も底打ちから反発する相場展開となりましたが、いずれも売買の増加を伴っており、フォロースルーの格好で相場の地合いは上方向への意識を強めているとされますが、足元の売りをこなした後に再び上昇基調を強められるかが今後の焦点となりそうです。

こうした株価上昇の背景にあるのは、米金利の低下が挙げられます。米10年債利回りの推移を振り返ると、10月下旬には5%台超えも警戒されていたのが、先週は4.5%台まで大きく下落したことが株式市場の追い風となった格好です。足元で「ほどほど」の景気減速を示す経済指標が相次いでいることや、先週公表された米国債の発行計画(四半期)で、20年債や30年債といった超長期国債の発行額が市場予想よりも少なく、債券市場の需給悪化による金利上昇懸念が後退したことなどがきっかけとなりました。

確かに、先週からの米金利低下は目立ちましたが、金利水準自体はいまだに高く、このまま金利が低下していくのか、それとも高止まりの傾向が続くのかをにらみながら、株式市場は方向感を探っていくことになりそうです。そのため、金利動向に影響を与える主因となる「インフレ」、「景況感」、「(債券市場の)需給」の動向をウォッチしていく必要があります。

まず、インフレ動向については、中東情勢のリスクの晒されている原油価格の行方が不透明なほか、米国内の賃金インフレは落ち着きを見せ始めているものの、労働環境の悪化は景気減速への影響も出てくるため注意が必要です。また、中国景気が強く持ち直す動きを見せた場合も、資源需要等の高まりによるインフレ要因になり得ます。

また、景況感については、米企業決算が一巡しつつある中で概ね堅調な内容でしたが、中国景気の悪化を滲ませているものも少なくないほか、相場が前提としている景気悪化の「ソフトランディング」見通しが「ハードランディング」へと転じた場合には、これまでのような「金利の低下が株高につながる」構図が揺らぎ始めることも考えられます。

さらに、需給要因については、現在も続いている米金融政策のQT(量的引き締め)の効果が出始めるタイミングにも注意を払う必要があります。コロナ禍の米経済政策(給付金など)で、約4兆ドルから9兆ドル近くまで膨らんだ米FRBのバランシートは、このQTによって8兆ドル台割れまで縮小しましたが、さらに、2024年末に6兆ドルまで縮小させていくことになります。また、バランスシート拡大による「カネ余り」が、米金融政策の利上げ効果を打ち消してきた面もあるため、金融引き締めの効果が本格的に出始めるのはこれからということになります。

2023年相場も終盤に差し掛かり、年末株高への思惑も働きやすくなるタイミングですが、仮に今後の株価が上昇したとしても、夏場の高値を大きく上回る上昇となるのは少し難しいかもしれません。

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