中国景気悪化の影

2023/11/03

11月相場入りとなった今週の国内株市場ですが、これまでのところ、日経平均が1日(水)の取引で節目の31,000円台を大幅に上回って回復するなど、株価の反発が目立つ展開となっています。日銀の金融政策決定会合がノーサプライズだったことや、トヨタなどの決算を好感する動きが追い風となった格好です。米FOMC(連邦公開市場委員会)を受けた2日(木)も上昇して取引をスタートさせています。

また、日米の決算シーズンも、すでに多くの企業が決算を発表している段階ですが、概ね良好な業績を示している印象です。ただ、日本企業の中には、中国の景気悪化への警戒を滲ませているものも少なくありません。具体的には、安川電機やニデック(旧日本電産)、ファナック、資生堂、コマツなどが決算発表時の記者会見で中国経済への不安を示唆しています。

中国景気に対する不安については、以前からも指摘されていましたが、今年の8月あたりから強く意識され始めています。例えば、中国の不動産大手企業の碧桂園(カントリーガーデン)が外貨建て債務の利払いができなくなったことや、恒大集団が米国の連邦破産法第15条の適用申請を行ったのをはじめ、経済指標が軒並み悪化していること、そして、数字が高くなり過ぎて問題視され始めた若者の失業率の公表を取りやめたのも8月でした。さらに、先ほどの碧桂園については、10月に外貨建て債務がデフォルト認定されるなど、状況は悪化しています。

とはいえ、最近の中国株市場をチャートで眺めると、上海総合指数はいったん底打ちしたような形状となっているほか、香港ハンセン指数も低空飛行ではあるものの、大きく相場を崩すような展開にはなっていません。中国不動産企業のデフォルト自体はすでに想定済みであったことや、中国政府がようやく、景気対策に乗り出し始める動きを見せ始めたことへの期待が影響していると思われます。

実際に、中国政府は10月24日に、1兆元(約20兆5千億円)の特別国債の追加発行を承認しました。具体的な中身を見ると、特別国債は2023年の10-12月期に発行され、その資金は2023年と2024年の2回に分けて5,000億元ずつ地方に配賦されます。

調達した資金は、名目上では災害復旧や水害防止など防災関連プロジェクトに使用するとされていますが、実際のところは地方政府や地方政府が抱える融資平台の債務の返済や借り換えに充てられるとされています。

問題なのは、1兆元という規模は、すでに明らかになっている中国不動産企業の債務額などと比べると、債務問題の解決には全然足りず、時間稼ぎにしかならないという見方があることや、特別国債を発行すること自体がかなり異例であるという点です。過去において、特別国債が発行されたのは、1998年(アジア通貨危機)、2020年(コロナ対応)など数例しかありません。

それだけ足元の状況に対する中国政府の危機感の表れで、景気対策に本腰を入れ始めたという見方もできそうですが、今回の対応によって、中国経済がどこまで回復できるかは不透明なため、目先で中国株は反発傾向を見せる可能性はあるものの、中国景気の減速警戒は今後も燻り続けることになるかもしれません。

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