金融政策イベント後の株式市場は上を目指せるか?

2023/08/04

「月またぎ」で8月相場入りとなった今週の国内株市場ですが、TOPIXがバブル経済崩壊後の高値を連日で更新するなど、上昇してスタートしたものの、2日(水)の取引では急落するなど、値動きの荒い展開となっています。

先週は、米FOMCや日銀金融政策決定会合など、注目の金融政策イベントを通過しました。日銀については、いわゆる「YCC(イールド・カーブ・コントロール)の柔軟化」が決定され、会合直後の日本株が急落する場面もありましたが、その後は下げ幅を縮小し、今週も上昇して始まったことを踏まえると、相場が落ち着くまでにあまり時間が掛からなかったと言えます。

今回の日銀会合については、事前の報道が「金融政策の修正なし」だったのが、直前になって「修正を検討」と報じられたというサプライズ的な経緯もあって、結果発表直後の市場が敏感に反応したと思われます。今後は、長期金利が今後どのくらいの水準で落ち着くのかをこれから探っていくことになるほか、長期金利の上昇が進むと、住宅や自動車などのローン金利や、企業の利払い負担増などの景気への影響が出てくることも考えられます。さらに、世界でも稀な金融緩和政策を継続している日本は、低金利の円を調達して高金利の海外金融資産などで運用する円キャリートレードなど、世界のリスクマネーの供給源という役割を一部で担っているため、今後はその役割の変化が出てくるのかなども焦点になってきます。

しかし、今後の相場で注意が必要なのは日本ではなく、無難に通過したと思われる米国の方かもしれません。

今回のFOMCでは、市場の予想通り0.25%の利上げが決定されたほか、今後の利上げについても、パウエルFRB(米連邦準備理事会)議長の記者会見で、「今後のデータ次第」という姿勢は変わりませんでした。FOMC通過によって、米景気のソフトランディング観測が高まったほか、利上げサイクルが最終局面にあることが確認された格好です。

こうしたFOMCの結果を受けて、先週の米国株市場は好調さを維持しています。NYダウは13連騰を記録したほか、S&P500も上昇基調を続けています。

とはいえ、景気の好調さが強すぎると、インフレの鈍化ペースが遅くなったり、再燃する可能性があるほか、金利が上昇する警戒感も高まることも考えられます。

さらに、いわゆる「逆イールド」が発生している米債券市場についても注意が必要です。一般的に逆イールドは、「将来の景気悪化と利下げを(債券)市場が織り込んでいる状況」とされており、株式市場と見ている景色が異なります。そのため、米国景気がソフトランディングへの観測をより強めると、こうした「債券市場が見ている景色」が修正されることになり、これまで買われてきた10年債が売られて金利が上昇するシナリオも浮上してきます。

したがって、足元の米国株の強さの理由となっている、景気に対する楽観的な見通し自体が、株価の上昇を抑制してしまうという「危うさ」も抱えているほか、今週は米国債の格付けが引き下げられたことをきっかけに相場が下落する動きも見せており、決算シーズンが一巡した後の米国株は上昇しにくくなるかもしれないことは意識しておく必要がありそうです。

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