「中国リスク」は徐々に意識されるか?
8月相場入りとなった今週の株式市場ですが、これまでのところ、日経平均はもみ合いの展開が続いています。テクニカル分析的には、200日移動平均線が株価のサポートになっている一方、上値については28,000円台の「節目」突破の攻防が意識されている状況です。
先週の米国株市場は、FOMC(連邦公開市場委員会)や、いわゆる「GAFAM」銘柄をはじめとする大手IT・ハイテク企業の決算、そして4-6月期のGDPといった注目イベントを通過し、一段高の展開となりました。日本株市場もこうした米国株市場の動きに「そこそこ」ついては行ったものの、米国株市場上昇の勢いにイマイチ乗り切れていない印象です。
足元で急拡大している新型コロナウイルス国内感染者の増加などが影響しているかもしれませんが、政策金利を引き上げたFOMC後の為替市場で円高が進んだことにも留意する必要があります。これまでの円安要因だった日米の金利差拡大ですが、現在では景況感の悪化やそれに伴うインフレのピークアウト観測、リスクオフなどの影響もあって米長期金利が伸び悩み、円高に向かう動きも出始めています。市場の視点は次回のFOMC(9月開催)での利上げ幅がどのくらいになるのかに向かっていますが、しばらくは米経済指標の結果に株式市場が敏感に反応しやすい地合が続きそうです。
また、リスクと言えば、今週はナンシー・ペロシ米下院議長による台湾訪問に際し、中国側が強い反発を見せるといった動きがあり、米中関係の緊迫化が警戒される場面がありました。ペロシ氏訪台直前の株式市場は売られる場面があったものの、すぐに落ち着きを取り戻しているため、今のところは大きな波乱材料にはなっていません。秋には米国で中間選挙、中国でも共産党大会という政治イベントが控えているため、「態度は強硬に出ても、こうしたイベントを前に、深刻な事態をお互いに避けるだろう」という見方が優勢のようです。
もっとも、あれだけ抗議したにも関わらず、ペロシ氏の訪台が実現してしまったことで、メンツを傷つけられた中国側からの反応には注意が必要です。すでに、中国は大規模な軍事演習や、台湾からの食品輸入の規制台湾へのサイバー攻撃などの動きを見せていますが、事態がエスカレートしてしまう可能性もありますし、習近平氏の政治基盤に影響を及ぼすことも考えられ、情勢は流動的です。
さらに、中国で特に気を付けなければならいのは、政治的リスクよりも、経済リスクの方かもしれません。不動産バブル崩壊など、中国の先行きに対する「悲観論」は、これまでに何度も繰り返されては否定され続けてきましたが、今回はかなり警戒しておく必要がありそうです。
その理由としては、「カネ周り」の危うさが目立ち始めている点が挙げられます。具体的には、不動産企業の債務問題をはじめ、それに伴う開発プロジェクトの遅延や頓挫、理財商品のデフォルト、地方政府の財政収入悪化に加え、公務員の給料カットや民間企業のリストラ、若者の失業問題、住宅購入者のローン不払い運動の拡大、一部金融機関で現金が引き出せなったことに対する抗議活動などです。
中国当局は5月末に大規模な経済政策パッケージを打ち出してはいますが、カネ周りが良くない今の中国の状況でこうした政策が効果を発揮できるかは微妙なところです。現在の市場は中国リスクについてあまり意識されていませんが、中国の状況は思っている以上に悪化している可能性があり、カネ周り問題の影響が中国の大手金融機関に飛び火した時などには特に注意が必要と思われます。
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