日米中銀への思惑が揺さぶる相場地合い
今週の株式市場ですが、これまでのところ荒い展開が目立っています。日経平均は注目の米FOMC(連邦公開市場委員会)という金融政策イベントを前に26,000円台の前半まで急落し、イベント通過後の16日(木)には大きく反発する値動きとなっています。
今回の米FOMCについては、先週までは従来予想の利上げ幅0.5%がすでに織り込み済みで、金融政策の論点は少し先の9月以降の政策方針に向かっていたのですが、先週末に発表された米5月CPI(消費者物価指数)において、インフレが減速していない結果だったことを受けて、にわかに0.75%への利上げ拡大を予想する動きが浮上してきました。
これを受けた今週の日米の株式市場はこうしたFOMCでの利上げ幅拡大を織り込む格好で大きく下落し、米主要株価指数(NYダウ・NASDAQ・S&P500)が揃って年初来安値を更新する場面も見せましたが、結果的にFOMC後の株価が反発し、いったん落ち着いたところを見ると、「噂で売って事実で買う」という相場格言を地で行くような展開と言えます。
とはいえ、米金融政策のタカ派スタンスが強まっていることに変わりはなく、利上げとQT(金融引き締め)による影響で景気を冷やしてしまうことに対する懸念は燻っており、このまま順調に株価が戻り基調を描けるかは微妙なところと言えます。実際に、今回のFOMCでは今後の見通しについて、それぞれの参加者の予想分布も併せて公表されたのですが、22年末時点での政策金利の見通しの中間値は3.4%となり、前回(3月)の1.9%見通しから大きく上振れています。
これまでパウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長は市場との対話を重視し、今後の政策方針について時間をかけてアナウンスするという手法をとっていましたが、今回の決定については、これまでとは異なり、「急に方針を変えてきた」という印象を与えてしまったことや、先週末の米CPIの結果を受けてすぐに利上げ幅を拡大させたことによって、「FRBが慌てている」と受け止められかねない面もあり、今回の利上げ幅拡大は今後のFRBに対する思惑を揺さぶる可能性があります。
また、日本国内でも今週は週末にかけて日銀金融政策決定会合が開催されます。今回の会合では大きな政策変更はないという見通しが大勢を占めていますが、つい先日、黒田総裁の発言が物議を醸した直後だけに、政策姿勢や発言のトーンへの配慮と市場の受け止め方が焦点になりそうです。
このほか、国内の債券市場では10年債利回りが日銀の許容する上限(0.25%)を超える場面があったり、債券先物市場が荒れる動きを見せるなど、日銀が実施している金利操作(イールドカーブコントロール、YCC)政策の限界論も一部で出始めています。さらに、日銀が近いうちに政策を変更せざるを得ないと見越して日本国債をショートしていると公表した海外ヘッジファンドも登場しており、中央銀行に対する思惑が揺さぶられそうなのは米国だけでなく日本も同様かもしれません。
したがって、足元の相場環境は中長期のシナリオを描きにくく、しばらくは値動きの振れ幅が大きい相場展開が続きそうです。
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