日本株の戻り基調はどこまで続くか?

2022/06/03

「月またぎ」で6月相場入りとなった今週の国内株市場ですが、日経平均はこれまでのところ戻り基調を描いています。テクニカル分析的にも節目の27,000円台を回復し、昨年9月14日を起点に、その後の戻り高値を結んだ「上値ライン」超えが注目されるところまで息を吹き返しています。来週末にはメジャーSQという需給イベントが控えており、このまま勢いに乗れれば、さらなる株高が期待できるかもしれません。

また、日経平均の直近安値は3月9日の24,681円ですが、先ほどの昨年9月14日の高値(30,795円)から見た下げ幅は6,114円です。この下げ幅に対する株価の戻り目安をフィボナッチ・リトレースメントで確認すると、38.2%戻し(27,017円)、50%戻し(27,738円)、61.8%戻し(28,460円)となり、6月1日時点の終値(27,457円)水準は、ちょうど50%戻しをトライしている状況です。

こうした足元の株式市場の戻りの背景には、米国株市場のムード改善が挙げられます。株価下落の反動や、インフレと景気減速に対する警戒感の後退、金融株が物色される程度で落ち着いている米長期金利の動向、中国の経済政策や上海市のロックダウン解除などが原動力となっています。さらに、国内要因についても、インバウンド緩和などの経済再開や、岸田政権が掲げる「新しい資本主義」の実行計画が6月中にまとめられることへの期待感などが追い風となっています。

とはいえ、「米金融政策とインフレがどこまで米国の景気を冷やすのか」に対する懸念は根強く、足元ではウクライナ情勢をめぐって、欧州連合(EU)がロシア産原油の禁輸で合意したことや、経済再開に伴う需要増観測を受けて原油価格が高止まりしており、相場環境は必ずしも良い条件が揃っているわけではありません。もちろん、「株価は不安の崖を登っていく」という相場格言の通り、ある程度の不安要素があるぐらいの方が株価は上昇していきやすい面もあり、必ずしも今の状況をネガティブに捉える必要はありませんが、「楽観過ぎないか」感への意識は持っておいた方が良いかもしれません。

実は、チャートの形で上値意欲が強く見えるのは日経平均やTOPIXなど日本株に多いように思われます。例えば、日経平均は25日・75日などの移動平均線を上抜け、200日移動平均線も視野に入っていますが、米国株市場に視点を移すと、NYダウやNASDAQは200日移動平均線はもちろん、まだ50日移動平均線も超えていないほか、NASDAQに至っては、リスクオンとオフの境界線として意識されてきた13,000pまでにはまだ距離があり、実はそこまで楽観ムードが広がっているとは言えないと考えられます。それだけ「株価の上値余地がある」と見ることもできますが、再びネガティブな材料に反応して株価が下落に転じやすいとも言えます。

例えば、すでに織り込んだとされる米金融政策は主に利上げペースで、次回(6月)のFOMCで実施されるQT(量的引き締め)についての織り込みはこれからですし、インフレ動向についても、鈍化を示す指標は出始めていますが、収束に向かっているかはまだ不透明です。さらに、中国では上海市でロックダウンが解除されましたが、他の都市ではまだロックダウンが実施されているところが残っているほか、矢継ぎ早に打ち出されている経済安定策も効果があるかどうか微妙なところです。

そのため、しばらくは上方向を目指しそうな株式市場ですが、「ちゃぶ台返し」のように下げに転じる展開には注意しておいた方が良さそうです。

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