中国リスクは弱気ムードの先取りを加速させるか?
今週の国内株市場ですが、日経平均は週初の17日(月)に反発してスタートしたものの、その後は軟調な展開へと方向転換しました。19日(水)の取引では前日比で790円安と大きく下落し、終値(27,467円)は、昨年の年初来安値(2021年8月20日)以来の株価水準となっています。節目の28,000円台割れや、昨年後半から形成してきた「三角保ち合い」を下放れし、チャート的にも形状が悪くなっています。
前回の当コラムでは、「少なくとも米長期金利(米10年債利回り)が1.8%超えを目指す動きにならない限り、株式市場が崩れることはなさそう」としていましたが、その「ならない限り」が実現してしまいました。確かに、先週の株式市場を揺るがした、米金融政策をめぐるFRBの要人発言はFOMC一週間前の「ブラックアウト期間」のため、発言自体は手控えられてはいましたが、地政学的情勢を背景とする原油価格の上昇とインフレに与える影響をはじめ、米金融機関(ゴールドマン・サックス)の決算内容を嫌気する動きや、国内でもトヨタが半導体不足などを理由に生産計画の台数を引き下げるなどの悪材料が重なり、市場のムードが弱気を先取りするような格好になった印象です。
また、今週は17日(月)に中国で12月分の経済指標やGDP(10-12月期・2021年)が公表されました。具体的な内容を見ていくと、2021年のGDP成長率は8.1%と2011年以来の高成長でしたが、コロナ禍に喘いでいた前年(2020年)の反動が寄与していることや、足元(10-12月期)や12月小売売上高などは前年比で減速という結果でした。その結果に対する市場の反応は限定的でしたが、実は後からジワリと弱気材料として効いてくるかもしれません。
その理由としては、中国経済の減速傾向が顕在化するのはこれからの可能性が高いからです。
例えば、現在も中国が行っている「ゼロコロナ」政策については、1年前の成功体験で国内外に大々的に喧伝されてきたため、面子の上で今更になっての方針転換は難しくなっているわけですが、2月の北京冬季五輪を前に、中国各地でオミクロン株の感染が確認され、五輪成功のために経済活動を犠牲にしてまで徹底したゼロコロナ政策を継続しています。さらに、1月下旬からの春節、3月の全人代(全国人民代表大会)前後でも厳しい移動制限が想定されるなど、景気減速の懸念が高まりつつあります。
さらに、ゼロコロナ政策以外でも、昨年から強化された各業界への規制が干渉の影響も気掛かりです。中国経済への寄与度が高い不動産業界を急激に冷え込ませたほか、IT大手や教育、ゲーム業界、芸能界など、幅広い圧力を掛けています。
もちろん、経済動向によって、中国当局の手綱はある程度緩めることは想定されますが、特に膨らんだ風船がしぼみ始めた不動産業界については、上手くコントロールできないかもしれません。規制緩和や補助金などの対策を講じてくると思われますが、そもそも「価格が上がりそうにない」不動産への需要は思った以上に上向きにならない事態も想定されます。
市場が中国経済の減速リスクを織り込むタイミングはまだもう少し先と思われますが、今週のように材料が重なるタイミングが悪いと、相場を荒らす展開となるため、注意しておく必要がありそうです。
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