短期の株価上昇ムードと中長期的な下押し圧力
今週の株式市場ですが、日経平均は週初の20日(月)に大幅な下落を見せ、節目の28,000円台を下回るスタートとなりましたが、その後は持ち直しを探る展開となっています。
テクニカル分析的には、日経平均の下値は8月20日の年初来安値を起点に、10月6日の安値、12月2日の安値、そして今週につけた12月20日の安値が一本の線で結べる下値ラインを形成し、「下げ止まるべきところ」で下げ止まっていますが、一方の上値については、12月に入り、200日・75日・25日移動平均線が抵抗となっていて、なかなか本格的な株価の戻りに勢いが出ていません。今週末はクリスマス休暇で海外株市場の休場が多く、薄商いが想定される中で膠着感を強めている印象です。
足元の相場で重荷となっているのは、新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」の感染拡大や、米財政政策成立への懸念、先日の米FOMC(連邦公開市場委員会)への再評価などの不透明感ですが、それでも、オミクロン型の低い重症化リスクという認識が強まっていることや、それに伴う中期的な経済活動正常化、出口を探る金融政策の方向性でも、実質金利の低下傾向など、相場の先高観は根強く、株価が下落した局面では、値頃感による買いが相場を支えています。そのため、相場にちょっとした安心感が広がるだけで、年末年始の株価が大きく上昇していく展開も想定できそうです。実際に、米国で新型コロナウイルスの飲み薬の緊急使用が承認されたと報じられたことで米株市場が上昇しています。
とはいえ、2022年以降を見据えた中長期的には、株価上昇ムードに水を差しかねない材料が多くあります。
例えば、米金融政策については、テーパリング(量的緩和の縮小)加速とその後の利上げは材料として消化されつつあると考えらえますが、その後のQT(量的引き締め)や、米利上げによる影響(新興国が景気情勢に関わらず、自国通貨防衛のために利上げを迫られる・ドル建て債務を抱える企業の負担増など)までは織り込みきれていない可能性があります。とりわけ、QTの議論が本格化することで長期金利が上昇する展開となれば、株高を支えている低い実質金利も上昇していくことも考えられます。現在の米長期金利(10年債利回り)の水準自体は、過去と比べるとまだかなり低い水準ですが、超量的緩和によって世界の債務が膨れ上がっており、わずかな金利上昇でもダメージとなることには注意です。
また、政治リスクにも配慮する必要があります。2022年は米国の中間選挙、中国の共産党大会、国内参議院選挙などのイベントが予定されています。それぞれ、人気取りのための景気刺激策への期待がある一方、政治的なメンツのため、米中関係での歩み寄りへの期待が盛り上がりにくいほか、国内の岸田政権が掲げる「新しい資本主義」についても、現時点で何をしたいのかハッキリ分からず、金融所得課税強化や、自社株買いのガイドラインについて言及するなど、株式市場との相性の悪さが目立っています。中国も、政治体制の強化と不動産企業債務への対処、経済構造の変革と安定などのあいだで難しい舵取りが要求されています。さらに、台湾やウクライナといった地政学情勢への警戒も燻っています。
もちろん、過度に悲観することはなく、コロナ情勢の落ち着きに伴う経済成長基調が続くという前提が崩れない限りは、相場は上方向を試しやすいと考えらえます。ただ、株価が大きく調整する場面が出現する可能性も高まっているため、取引のタイミングの見極めが2022年相場を乗り切るポイントになりそうです。
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